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2023.07.17 08:00

小社会 処理水の地元はいま

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 ごみの低温燃焼で出る有害物質ダイオキシンの対策が本格化したのは1990年代後半のこと。国が規制を強め、県内の市町村も焼却炉の更新を迫られた。いわゆる迷惑施設の建設に地元で反対運動が起きた場所もあり、何件かを取材した。

 こういう時の地元住民は苦しい。施設の必要性は頭では分かる。安全性も信じたい。でも将来リスクと風評被害はある。それをなぜ自分たちが負うのか、と追い込まれる。

 一方で、事業の受益者である他の地区の人たちは、往々にして無関心だったりする。「他の地域も問題を共有してほしい」。孤立する住民から、こんな切実な思いを何度も聞いた。

 福島第1原発の処理水を巡り、海洋放出への理解を求められている地元漁業界も今、つらい立場だろう。放出には反対。だが、処理水の保管が限界を迎えている現実がある。その中で、国際機関による安全のお墨付きや巨額基金など、外堀が埋められつつある。

 国際世論にも振り回される。特に中国。放出反対の立場は同じだが、「核汚染水」との表現は悪意に満ち、問題を政治利用する意図もみえる。こうなると、すがりたくない日本政府に対中国戦略をすがらざるを得なくなり…。その心中の複雑さは、いかばかりか。

 処理水は、国民全体で共有するべき問題だろう。きょうは「海の日」。海の恵みに感謝するのが本来の趣旨だが、福島沖の海に思いを巡らす日にもしたい。

高知のニュース 小社会

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