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2023.07.17 08:00

【教頭のセクハラ】教委の甘さが被害広げた

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 教員としての資質以前に、人としてあるまじき行為だった。教育委員会などの組織的な対応にも不備が目立った。県内教育界が失った信頼は大きく、回復は簡単でない。
 土佐清水市の小学校の元教頭の男性が、同僚女性2人にセクハラを重ね、懲戒免職処分となった。
 元教頭は2022年度、臨時講師の女性に交際をしつこく迫り、女性はストレスから病気になって退職した。教員採用試験で口利きをしたよう装ったうその手紙も渡し、好意を向けさせようとしていた。
 また、その2年前には、別の女性講師にも教員採用試験の口利きを持ちかけ、交際を迫っていた。
 いずれも、雇用が不安定な弱い立場の人に対し、管理職の優越的な立場を悪用していた。自らを権威付ける手紙を捏造(ねつぞう)したり、不倫をでっち上げて相手を中傷したりもしている。問題発覚後はごまかす行為もあった。悪質さが際立つ。
 これにより2人の講師は学校職場を離れた。元教頭の教え子たちは裏切られた思いだろう。日々、子どもたちと真摯(しんし)に向き合っている他の教員たちも色眼鏡で見られかねない。周囲に与えた打撃は大きい。
 当時の校長や土佐清水市教委も、対応が後手に回ったと言える。
 市町村立小中学校の教員は、都道府県が採用、異動、懲戒などの人事権を持ち、市町村に服務監督権がある。市町村教委は、懲戒処分に当たる可能性がある事案は、県教委に報告する必要がある。
 市教委は昨年8月に2件目の事案を把握した際、県教委に報告しなかった。「懲戒処分を視野に入れるべき重大案件」(県教委)であるのは素人目にも明らかだ。しかも市教育長はその際、1件目の前例についても併せて伝えられている。
 その時点で適切に対応していれば2件目の講師の退職は防げた可能性がある。さかのぼれば、1件目の被害の際に厳格に対応していれば2件目は起こらなかったかもしれない。
 認識の甘さが被害を広げたと言ってよい。市教委は当時の対応への反省を口にするが、蒸し込もうとしたと疑われても仕方あるまい。
 県教委の対応にも疑問点がある。昨年12月に2件目の事案の報告を受け、「重大案件」と受け止めながら今春の人事では元教頭を異動させて教壇に立たせていた。
 虚偽説明などで事実確認に手間取ったのかもしれないが、懲戒の可能性が高いのなら現場から外すよう主導すべきではなかったか。結果的に年度途中で元教頭は免職され、児童や保護者を巻き込んだ。
 いま県内外を問わず、学校の職場環境の厳しさから教員不足などが課題になっている。そうした中で今回の事案は学校職場への不信感を広げてしまった。
 なぜセクハラを防げなかったのか組織的な要因の検証がまずは不可欠だ。高知南高の教育実習生に暴言を重ねたパワハラ事案も表面化した。県教委は対策強化を掲げるが、それを欠けば実効性も高まらない。

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