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2023.07.14 08:00

【NATO会議】結束を和平につなげたい

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 ロシアのウクライナ侵攻が長期化し、ウクライナの反転攻勢は想定ほどには進んでいないと指摘される。欧米は支援を継続し、結束して対抗する姿勢を明確にしたが、惨禍の拡大は避けなければならない。和平への取り組みが怠れない。
 北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は、ロシアが侵攻したウクライナの安全保障・防衛部門の再建を複数年にわたり長期的に支援するとの声明を出した。ウクライナとNATOとの「完全な相互運用性」を確保し軍事面での一体化を進める。
 その一方で、ウクライナのNATO新規加盟に向けた日程や手続きを定めることは見送った。NATOは2008年にウクライナの将来的な加盟で合意している。ウクライナ側が今会議で最も重視したのは、加盟期限の明記だった。
 加盟への道筋が明確にならないことに、ゼレンスキー大統領は「ばかげている」と強い不満を表明して状況を動かそうとした。それでも将来的な加盟の確認と、加盟手続きの短縮の合意にとどまった。
 NATOは集団防衛を定め、加盟国が軍事攻撃を受けた際には全加盟国への攻撃と見なす。現状でウクライナの加盟を認めれば、加盟国は軍事行動を迫られる。
 武器の供与などの支援とは異なる重みがある。ロシアへの警戒感が伝統的に強いバルト3国やポーランドなどが加盟を支持する一方、米国やドイツは慎重姿勢を見せる。各国の温度差が浮き彫りになった。
 他方、NATOウクライナ理事会はゼレンスキー氏も参加して初会合を開いた。委員会から格上げされた。加盟容認に踏み込めない中で結束を印象づけたい思惑もうかがえるが、ウクライナが加盟国と対等な立場で協議し、意思決定することで政治的な関係は近づく。
 声明はまた、冷戦終結後初となるロシア攻撃時の防衛計画の策定や、加盟国の防衛費を国内総生産(GDP)比「最低2%」に設定することを盛り込んだ。
 ロシアは反発を強めている。「完全に冷戦思考に回帰した」と批判して対抗措置を取ると警告する。首脳会議への示威行動ともとれるウクライナ攻撃を行った。だが、まず侵攻が混乱を深めていることを認識し、停戦するべきだ。
 2年連続で会議に出席した岸田文雄首相は、ストルテンベルグ事務総長と会談し、「国別適合パートナーシップ計画」(ITPP)を発表した。サイバー防衛対処、宇宙安全保障など16分野での協力を盛った。
 共通課題に対処するため、協力を強化する重要性が増している。覇権主義的行動を強める中国を念頭に、インド太平洋地域での日欧の連携拡大を図る。
 インド太平洋の状況は、欧州や大西洋の安全保障にも影響するとの認識がある。ただ、欧州の対中包囲網への意識は経済的なつながりもあり一枚岩ではない。日本もNATOとの関係強化が過度な反発を招かないように警戒する必要がある。

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