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2023.07.13 05:00

小社会 地平線の彼方から

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 地平線という言葉と高知県は縁遠い。なにせ山が8割を超える森林県だ。知らないものに人は引かれる。あの巨匠がサハラに魅了されたのには、そんな理由があるのかも。

 三原村出身の日本を代表する写真家、野町和嘉さんの写真展「地平線の彼方(かなた)から」が県立美術館で始まった。

 題名通り、地平線からこちらを見るように地球全土を体当たりで撮り続けて半世紀。その集大成といえる写真展だ。

 代表作はその都度目にしてきたが、200以上の作品が野町さんの歩みと重なりながら並ぶ内容は、やはり集大成にふさわしい。被写体は人々の営みや信仰。輪郭が曖昧な現場も多かったことだろう。だが野町さんが切り取ると、何より雄弁な一枚になる。「瞬間は永遠につながる」(20世紀の世界的写真家カルティエ・ブレッソン)

 野町作品のもう一つの魅力は、撮影が困難な場所に足を踏み入れてきたことだ。スーダン、チベット、メッカ、そしてウクライナ侵攻にも関連するシベリア収容所…。「時代が良かった」と野町さん。「自分の無茶(むちゃ)と時代がうまくシンクロした」(キヤノン配信のインタビュー動画より)。フィルムからデジタルへの技術革新も含め、その半世紀に時代が詰まる。

 一方で、全市民がカメラマン化したスマホ時代に懸念も示す。写真の記録性が「技巧だけでは色あせる」。では写真家はどうあるべきか。野町さんが切り開く地平はまだありそうな…。

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