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2023.07.12 08:00

小社会 人生はダウンロードバー

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 それは不意にやってくる。夕暮れの街を自転車で走っている時、回転ずしのレーンをぼんやり眺めている時……愛する者を失った痛みが不意に込み上げる。このような悲しみをどうすればいいのだろう。

 香美市土佐山田町に住むデザイナーの梅原真さんは「デザインとは解決すること」だという。最新刊「わらうデ」(羽鳥書店)の冒頭は、いわば「死のデザイン」の話である。

 梅原さんは土佐弁としての「みてる」に着目する。小学4年生の時に、この言葉を「ミテル」という「サウンド」として初めて認識した。おばあちゃんが発した言葉の音に、人の死を悼む気持ちばかりでなく、どこか明るさも秘めているような気がして、鮮烈な記憶を残したというのだ。

 「みてる」の語源は、いっぱいにするという意味の「満たす」の古い形からきているという。万葉集にも「みてる」という用例があるが、人が死ぬという意味では使われてこなかった。ここからの梅原さんの解釈が面白い。

 パソコン上などで表示される「ダウンロードバー」が思い浮かぶという。データを全てダウンロードした状態が「ミテル」なのだと。死をネガティブに考えず、「満たした」というポジティブな言葉にも土佐の人たちは変換した。

 梅原さんは書く。〈年齢には関係なく、その人は一生懸命に生きて命を全うした、人生をフルに満たしたんだと最上級のコトバで尊んで見送るのだ〉

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