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2023.07.11 08:00

小社会 密告社会

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 旧東ドイツは恐るべき密告社会だった。秘密警察が政府と考えを異にする人々を取り締まる。国の末期にはそれに協力する情報提供者が国民の90人に1人、およそ19万人も置かれた。

 互いに監視し、通報し合う社会。こんなジョークがある。ベルリンの壁近くで2人の警備兵が「西側」の方を見ながら話している。「お前は何を考えている?」「お前と同じことだよ」「じゃあ、お前を逮捕しなきゃな」(教育評論社「笑え!ドイツ民主共和国」)

 いつ誰に密告されるか分からない。「会話に注意しなさい」。東独で育ったメルケル・ドイツ前首相も少女の頃、父にたたき込まれた。その息苦しさについて、後に「人々の自由を踏みにじる不法な秘密警察国家だった」。

 いまなお「密告」の言葉を盛んに聞くのは、専制主義国ならではだろうか。国家安全維持法ができた香港の警察には「密告ホットライン」があるという。英国に移住した民主活動家は、密告されないか移民の間でも相互不信があると明かす。

 中国は今月、改正した反スパイ法も施行した。スパイ行為の定義は広がり、何が違法なのかは不明確だ。これまで以上に恣意(しい)的運用が懸念される。さらには14億国民に「通報」を義務付けたのも目を引く。

 息苦しさからの自由を求めるマグマはかの国でも時折、噴き出しては鎮められる。古今東西、そうした国家は強いのか、いや、もろいのかと考えてみる。

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