2024年 04月29日(月)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2023.07.11 08:00

【生成AIと学校】適切に使う力を育みたい

SHARE

 対話型の人工知能(AI)「チャットGPT」など生成AIの教育への活用について、文部科学省が小中高向けの指針を作り、全国の教育委員会などに通知した。
 生成AIは分析や情報収集のほか、言語や文章力にも優れ、企業や政府、自治体でも急速に利用が進んでいる。一方で、正確性や個人情報、思考力への影響といった問題点も指摘されている。
 教育への活用に賛否両論が渦巻いているのもこのためだ。指針も抑制的な内容となった。
 ただ、いまの開発や普及のスピードを考えると、この先、私たちの社会は生成AIを無視できなくなるだろう。今後、ますます身近な存在になっていくと考えられる。
 情報モラルや情報の真偽を見極める力も一層問われる。適切に使う力が求められ、子どもたちもそれを学ぶ必要がある。教育現場も文科省も、慎重な対応と同時に適切な活用への研究が欠かせない。
 指針は、学校関係者が活用の適否を判断する参考資料として、文科省が専門家らから意見聴取もして取りまとめた。
 生成AIを使いこなす力の必要性に触れながら、いまの生成AIの諸問題も指摘。現時点では「限定的な利用から始めることが適切」としたのが特徴だ。現実的な方向性といえるだろう。
 具体的には、学習指導要領にもある「情報活用能力」の育成が十分でない段階で自由に使わせるのは不適切とした。特に「学校段階の児童に利用させることには慎重な対応」を求めた。
 生成AIが作り出した読書感想文をコンクールに提出するのは不正行為とも指摘。子どもの感性や独創性を発揮させたい場面などで安易に使うことや、定期テストで使わせるのも適切でないとした。
 活用例としては、生成AIの限界や誤りを指摘させる学習や、英会話の相手としての利用などを挙げた。教える側が不適切な用い方をして、AIがさらに発達する未来を生きる子どもたちに間違ったメッセージを伝えないようにしたい。
 ただ、教育現場の意欲的な取り組みを萎縮させる流れになってはならない。既に効果的な利用を目指した実践例があり、教員自身が生成AIを学ぶ動きも出ている。
 情報技術は人や組織によって利活用の技術や知識、価値観の差が大きい分野だ。教育現場も同じだろう。生成AIの登場でそれがさらに広がり、児童・生徒の学びの差となることも十分考えられる。
 指針はこうした課題については踏み込めていない。教員の研修シーズンである夏休みに間に合わせようと短期間で作成された。文科省も「暫定的」な指針としている。
 今後モデル的な取り組みを通じ、成果や課題を検証し、機動的に改定。中央教育審議会などでも検討するとしている。教育現場が混乱しない環境づくりや試行錯誤が続く現場への支援体制が大切になる。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月