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2023.07.07 08:00

【マイナ保険証】一度立ち止まるべきだ

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 マイナンバーカードに対する国民不信が収まらない。自主返納が増えるなど、むしろ拡大する一方だ。
 続発するトラブルは、政府が普及を急いだことに起因する。その責任は当然問われるべきだが、善後策を巡っても、場当たり的だったり性急さが指摘されたりし、かえって不信感を増幅させている。いま必要なのは、腰を据えた対応により不信の悪循環を止めることではないか。
 マイナカード問題に関して、衆院特別委員会の閉会中審査が開かれた。しかし政府側の基本的な姿勢は変わらず、不信解消につながったとは到底言えない内容だった。
 大きな焦点になっているのは、来年秋に現行の健康保険証を廃止し、マイナカードを使った「マイナ保険証」に一本化する方針の是非だ。
 マイナ保険証を巡っては、別人の情報がひも付けられるケースが約7400件確認され、閲覧された例もある。読み取りの不具合で「無保険扱い」の患者に医療費10割を請求した例も発生。高齢や病気のためカードの交付申請や管理が難しい人への対応も懸案化している。
 医療情報の把握で手違いがあれば命にもかかわる。厚生労働省によると、マイナ保険証に医療情報を登録した健康保険組合などの約4割で作業手順が不明だといい、正確な情報入力へ再点検が不可欠だ。実務的な準備も不十分で医療機関側は保険証廃止に反対している。そのような中で日程ありきの姿勢では危うい。
 しかし、閉会中審査で政府側は、来秋の日程を譲らなかった。
 その上で、保険証廃止によって生じる課題には柔軟に対応する姿勢を示した。例えば、マイナ保険証を持たない人が保険診療を受けるための資格確認書を、医療機関が発行する場合もあるなどと説明した。
 これらは現行保険証を併用すれば対応できる話である。そもそも、河野太郎デジタル相が昨秋表明した保険証廃止方針も唐突だった。生煮えで進め、課題が次々と浮かび、場当たり的に対応しているのが実態ではないか。マイナ保険証の取り組みは一度立ち止まるべきだ。
 トラブルは保険証以外にも、コンビニでの証明書の誤交付など広範囲にわたり、政府は「マイナポータル」で閲覧できる全29項目を対象に総点検に乗り出している。
 ただ、岸田文雄首相が総点検を表明しても、自治体にはまだ具体的な手法が示されていないという。一方で、点検結果の中間報告を8月末から8月上旬に前倒しし、負担が増すとして自治体の不満が聞こえる。
 政府が点検を急ぐのは、問題が内閣支持率の下落につながっているからだろう。しかし、トラブルの一因は政府の強引な普及策にある。そのフォローで再び自治体にしわ寄せが及んでいる。再点検作業でまたミスが起きるのではないか。
 悪いイメージの解消のためか、河野氏がマイナカードの名称変更に言及する一幕もあった。このような弥縫(びほう)を重ねていては、国民の不信感は増すばかりだ。

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