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2023.07.06 08:00

小社会 つぐみの1度

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 「あきらめたらそこで試合終了だよ」。人気バスケ漫画「スラムダンク」のあの名言を思い出す大逆転劇だった。

 女子レスリング、パリ五輪につながる世界選手権を懸けた大一番を、桜井つぐみ選手(高知南高出)が制した。

 宿命のライバルとの試合は劣勢。迎えた残り1秒弱、相手の体をあおむけに返そうとしたところで終了のブザーが鳴った。両肩のラインが90度以上返っていれば技が成立して桜井選手の勝ちだが、ビデオで見ると肩は地面とほぼ垂直だ。判定は―。2分後、ポイントを認めるアナウンスに会場が沸いた。

 体が返った角度は正確には分からないが、先のサッカーW杯の「三笘の1ミリ」並みに際どかったのは確かだ。五輪を引き寄せた勝ちの重さを考えれば、さしずめ「つぐみの1度」とも語り継げる。

 トップアスリートの戦いは、紙一重で明暗が分かれる。まして、世界より国内で勝つ方が難しいと言われる女子レスリング界だ。わずか「1度」。だがその1度をもぎ取るため、過酷な練習を重ねてきたのだろう。桜井選手は試合後半に強く、これまでも最終盤で数々の逆転劇を演じてきた。今回も「最後の1秒まで諦めなかった」。

 「諦めない」は指導者である父、優史さんの教えでもある。高知国体を縁に来高。ジュニア育成に力を注ぎ、地方でも人材を輩出できることを示してきた。桜井親子の五輪への夢が、スポーツ後進県が歩む道も照らす。

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