2023.07.06 08:39
高知県宿毛市が全市民に認知症予防策 オンラインで動画提供へ
オンラインで認知症予防の運動に挑戦する住民ら。現在約50本あるエクササイズ動画は1~30分とさまざまで、個々人の体力や時間に合わせて選択できる(宿毛市さくらが丘のさくらが丘コミュニティセンター)
厚生労働省によると、2025年には65歳以上の高齢者5人に1人が認知症になると推計されている。同市の人口は7月1日時点で1万8942人で、65歳以上の割合は今年4月に初めて40%を超えた。20年時点で、高齢単身世帯が18・6%(全国平均12・1%)、高齢夫婦世帯は14%(同10・5%)となっている。
市は「市域が広く、高齢者が分散して暮らしている」とし、今後、認知症患者の増加で、家族や地域住民への負担が増すことを懸念。従来の介護予防や、認知症患者や家族の支援施策に加え、発症や進行を遅らせる「認知症予防」に焦点を当てた取り組みの充実を検討していた。
プログラムは、認知症治療や予防に取り組む順天堂大学名誉教授でアルツクリニック東京(東京)の新井平伊(へいい)院長(70)主導の下、21年から実践。昨年11月末からオンラインで提供している。
提供される動画では、指先を動かす運動が脳にどのような刺激をもたらすのかなどを解説。インストラクターと一緒に楽しむ運動や、新井院長による認知症研究の最新動向、医療機関を受診する際の目安といった知識を紹介する。
新井院長は「認知症予防などで教室を開く場合もあるが、時間と場所を設定する集合方式」と効率面の課題を指摘。認知症の予防は日常的な継続が重要で、オンラインではそうした課題が克服できるとする。
今月2日には、新井院長らが同市さくらが丘を訪れ、住民ら約25人にプログラムの内容を紹介。住民らは、インストラクターが出すじゃんけんの手を見てから瞬時に勝つ手を判断して出すエクササイズに挑戦した。こうした二つのことを同時に行ったり、左右で違う動作をしたりといった普段あまりしない動きが適度に脳を混乱させ、認知機能などを向上させることが研究で明らかになっているという。
深谷安信地区長(75)は、「認知症予防は、将来の家族や住民の負担を減らしてくれる」と期待。現在、週2回実施している介護予防の百歳体操と併せて取り組んでいくとしている。(坂本出)