2023.07.04 08:00
小社会 走るリーダー
暴動は起こさず、いわば「静かな抵抗」を試みたわけだが、これが大きな反響を呼ぶ。王は支給を急ぎ、数日で騒動を治めたというから、実行力のある為政者だったのだろう。もちろん、記録が史実通りであればの話だが。
時代は変わって現代の日本。こちらも「静かな抵抗」といってよい。静かではあるが、かなり痛烈な批判でもある。マイナンバーカードの自主返納が全国で相次いでいる。
運転免許証の自主返納はよく聞くが、マイナンバーカードにも起きるとは政府も想定外だったのでは。それもこれも普及を急ぎすぎたつけ。個人情報の誤登録などトラブルが多すぎる。政府は一連の混乱を早期に鎮められるのか。
ピラミッドには壁に走る王の姿が刻まれたものがある。「王は走る。肉体的な力と支配力を証明してみせるため」にとするのはエジプト考古学者の吉村作治さんだ(著書「ピラミッド・新たなる謎」)。やはり実行力が問われた。
岸田首相が全国行脚に乗り出す。「聞く力」を改めてアピールし、支持率向上につなげたいようだが、注文がある。走り回るのはよいが、聞くだけでは困る。政策の論点を先送りしたり、曖昧にしたりしたまま行脚するのもどうだろうか。