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2023.07.03 08:00

小社会 ウイルスの非情

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 私事ながら、先ごろ家族の手術と親戚の不幸が重なった。家族は幸い、カテーテル手術で数日後には退院できた。それでも50年来の連れ添いは、随分と歯がゆい思いをしたらしい。

 県内の病院では今も、新型コロナウイルス拡大への警戒が続く。見舞いもできず、退院の出迎えも玄関ホール。仕方がないと分かってはいても、どうにもやるせない。術後の経過が順調でもそうだから、永遠の別れとなった親戚はなおさら心の整理は難しそうだった。

 告別式では気丈に振る舞っていたものの、次第に夫を亡くした現実が身に染みてきたのか。「視線も、言葉も交わせられなかった」。思うに任せないみとりへの無念が、つい口をついて出た。

 これが夫婦、家族の情なのだろう。かける言葉も見つけられなかった。直接の感染はもちろん、別の病気の人や家族にも苦しみを強いる。ここにウイルスの非情を見る。この3年半、どれだけの人がこんな思いをしたのか。

 新型コロナがまたぞろくすぶってきた。感染症法上の扱いが5類に移行して2カ月弱。「第9波」入りの可能性を指摘する専門家もいるが、流行との「距離感」はつかみにくくなった。定点観測では増減の傾向は見えても、規模が以前ほどは分からない。

 流行が見えづらくなった分、緩めた警戒レベルをいま一度引き上げておきたい。非情さを思えば、新型コロナを「普通の病気」と言うにはまだ早すぎる。

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