2023.07.02 08:00
小社会 半夏雨
すてき系は「春愁(はるうれい)」や、秋の夜でもいっそうふけわたった雰囲気をいう「夜半(よわ)の秋」を挙げる。さらには「半夏生(はんげしょう)」。「まず、その響きが、すてきです。漢字も、すてき」(「わたしの好きな季語」)。
きょうは七十二候の一つ、半夏生。夏至から11日目で、昔は田植えを済ませるなど農業の重要な目安になる日だった。関西ではタコを食べる風習がある。これも吸盤のごとく苗が根付くように願ったものというから、稲作との縁は深い。
半夏生のころに降る雨は「半夏雨(はんげあめ)」で、大雨になるといわれる。故・倉嶋厚さんの「二十四気物語」によると、この時期に出る大水は広島や大分、熊本各県に伝わる方言で「半夏水(はんげみず)」。こちらはちょっと、すてき系とは言えない。
梅雨末期は大雨になりやすい。気温が高くなり、空気中の水蒸気量が増えて雨雲が発達しやくなるためだ。それにしても近年は7月上旬に、半夏水の言葉がある九州や中国地方と豪雨災害が重なった。ここ数日、また各地から集中豪雨の報が届く。昔から伝わる半夏雨に気候変動も加わっているだろうか。
本県でも51年前の繁藤災害は7月上旬に起きている。美しい半夏生の響きにも、警戒は怠れない。