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2023.07.02 08:00

【電動ボード】安全へ新ルール浸透を

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 電動キックボードの規制が7月から緩和され、仕様が一定基準以下の車体であれば、自転車に近い感覚で乗れるようになった。
 手軽な移動手段として重宝されるかもしれないが、事故の増加が懸念される。新ルールの周知など抜かりのない安全対策が求められる。
 電動ボードは、車輪が付いた板にハンドルを付けた形の1人乗りの交通手段で、モーターで走る。従来の道交法では、ミニバイクと同じ原動機付自転車に分類され、免許やヘルメット着用、ナンバープレートやミラーなどの装備が義務づけられていた。
 新しいルールは、最高時速が20キロ以下で一定サイズ以下の車体は「特定小型原動機付自転車」に分類し、16歳以上なら免許不要で乗れるようにした。
 原則、車道の左側や自転車専用レーンを通行し、最高速度6キロ以下に制御されていれば歩道も通行できる。ヘルメット着用は努力義務とする。交通反則切符(青切符)と放置違反金制度の対象となる。
 もともと電動ボードは性能に幅があった。その中の速度を抑えた車種について、用途拡大を見込み、扱うハードルを下げた格好だ。
 狙いは、交通手段の多様化と利便性の向上にあるようだ。機動力に優れた電動ボードは、渋滞が頻発する都市部だけでなく、移動手段が少ない過疎地などでも効果的な活用が期待できる。観光客の足としても実用的で、環境に負荷が掛からないとの特徴もある。
 ただ、安全確保の面で不安があることは否めない。
 警察庁によると、電動ボードに関する人身事故は年々増え、2022年には41件あり、飲酒運転が疑われる自損事故で初めての死者も出た。交通違反の摘発も、統計を取り始めた21年9月から約1年半の間に2千件を超える。
 規制緩和で普及が進めば、事故や違反が起こりやすくなるのは避けられまい。最高速度が抑えられた車種とはいえ、歩道も通行する。電動ボードの車輪は小さく、歩道と車道によくある段差は危険だろう。歩行者との接触にも注意する必要がある。
 利用者の混乱や勘違いを招くことも想定される。車体によって分類が異なれば、新ルール対象外の車体が歩道を通ったり、運転手がヘルメットを着用しなかったりなどといった事態も起こりうる。
 免許が要らないため、交通ルールやマナーをほとんど知らないまま高校生や大学生が乗るケースも少なからずあるのではないか。危なっかしい電動ボードの運転が頻発すれば、ほかの車やバイクのドライバーは困惑し、大きな負担にもなる。
 移動手段の多様化は重要だが、やはり安全確保が大前提だ。警察当局は、自治体などと連携しながら周知啓発を徹底し、ルールや法令順守意識を浸透させていく必要がある。電動ボードを扱う事業者らも、より安全性の高い車体への工夫などが求められよう。

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