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2023.06.30 08:00

【香港国安法3年】自治をゆがめた重い責任

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 民主派を抑圧し、政治参加を阻止して「香港の中国化」が進む。物言えぬ状況に海外移住も選ばれる。親中派との亀裂は大きく、社会の分断が指摘される。強権的な締め付けで自治をゆがめた責任は重い。
 香港での反政府活動を取り締まる香港国家安全維持法(国安法)が施行されてきょうで3年になる。この間、デモは抑え込まれ、政党や民主派団体は解散を迫られた。
 中国への容疑者引き渡しを可能とする条例改正反対など民主化デモが2019年に活発化し、習近平指導部が主導して抑え込みを図った。その柱である国安法は、国家分裂や政権転覆、外国勢との結託などを犯罪行為として処罰する。
 国家安全に危害を与える活動に関わったとして、3月時点で約240人が逮捕され、うち約140人が同法違反罪などで起訴されたという。恣意(しい)的な運用への懸念は根強い。 
 1年ほど前には、民主派系の香港紙で中国に批判的な論調で知られた蘋果(ひんか)日報(リンゴ日報)が廃刊に追い込まれた。最終号は「報道の自由は暴政の犠牲となった」と記した。言論を巡る状況が好転する状況にはない。
 民意の反映は選挙でも困難になっている。香港立法会(議会)は選挙制度が変更された。資格審査を取り入れて反中国的な候補者を排除するなど、「愛国者による香港統治」を強化した。住民生活に近い区議会(18区の地方議会)は、19年の前回選挙で民主派が圧勝した。このため直接投票枠を削減するなど、親中派に有利な制度の導入をもくろむ。民主派排除の姿勢は徹底している。
 こうした動きに香港を離れる人も多い。英国には14万人を超える家族らが移住したという。香港では少子高齢化の影響もあり、労働力不足が深刻化している。当局は、中国からの労働力の受け入れを強化することで打開を図る。しかし、社会が急激に変化しかねず、市民には複雑な思いもあるようだ。
 一方、国安法は海外での行為も対象とし、適用範囲は拡大している。日本留学中の香港人が反政府デモ支援や香港独立を含む内容を交流サイト(SNS)に投稿したとして、帰省後に国安法の国家分裂扇動容疑で逮捕された。
 起訴は刑事罪行条例違反罪としたが、この罪は海外での行為に適用する規定はない。海外での言論も訴追対象とする厳しい姿勢が明確になった。移住者にとっても、会話など日常生活での警戒感が強まると指摘される。影響は極めて大きい。
 香港の一国二制度は骨抜きになった。香港基本法は、1997年の英国からの返還後も50年間は資本主義を維持し「高度の自治」を認めると規定する。それが守られていないのは明らかだ。
 香港情勢は台湾問題に重なる。中国は台湾統一は内政問題だとして批判をかわすが、国際社会の見方は異なる。香港への姿勢は台湾情勢の緊張を高める一因となっていることを受け止める必要がある。

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