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2023.06.29 05:00

小社会 風刺漫画

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 世相や政治家を斬る風刺漫画は明治以降、新聞や雑誌とともに発展した。高知が生んだ二大モデルは、板垣退助と吉田茂だそうだ。とりわけ吉田元首相をさかんに描いた漫画家に、毎日新聞などで活躍した那須良輔(1913~89年)がいる。

 著書の「漫画家生活50年」によると、戦時中は戦争協力の作品しか発表できなかった。〈敗戦をむかえてはじめて自由な作品が描けるようになり…政治漫画家達(たち)は、翼を得た鳥のように政治風刺の漫画を発表しはじめた〉

 その那須が吉田首相と顔を合わせた時のこと。「君、ボクのモデル代がだいぶたまっているはずだから、よこしたまえ」。那須もユーモアで切り返したようだが、ようやく得た自由と政治家の器量を感じさせる話ではある。

 香港国家安全維持法の施行から、あすで3年になる。中国に批判的な蘋果(ひんか)日報は廃刊。この5月には中立的な新聞が40年続いた風刺漫画の打ち切りを決めたという。言論の自由が「崖から転がり落ちるように」消えている。

 ただ、お隣の国のことで済むのかどうか。「けしからん番組は取り締まる」。先の国会では、時の政権中枢がそう発言したとされる放送法の解釈変更問題がうやむやになった。先日は街頭演説中だった時の首相にやじを飛ばし、警察に排除された男女による訴訟の判決が議論を呼んだ。

 気がつけば自由が萎縮していることはないか。「翼」は大事にしなければ。

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