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2023.06.28 08:00

【旧文通費見直し】先送りが映す国会の怠慢

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 世論の関心が高まって1年半になるが、国会は改革への動きが極めて鈍い。議員特権に厳しい視線が向けられている。自らの課題に正面から向き合わないと政治への不信は拭えない。
 国会議員に月額100万円支給される「調査研究広報滞在費」(旧・文書通信交通滞在費)の本格的な見直しは先の国会でも実現しなかった。
 国会の常任委員会や特別委員会の委員長に1日6千円支払われる手当の廃止は改正法が成立した。これにより、衆参両院で年間約5千万円が削減されるようだ。
 経費削減への取り組み自体は歓迎するが、旧文通費を巡る議論の本質ではない。国会改革が進んでいるように見せかけ、見直し先送りの方便にしてはだめだ。
 旧文通費が注目されるようになったのは、2021年10月の衆院選だった。日本維新の会の新人議員が、在職1日の当選者に10月分が満額支払われることを問題視したことがきっかけだった。
 半年後には日割り支給は実現している。だが、使途公開や未使用分の国庫返納の課題は先送りされている。立憲民主、維新、国民民主3党は昨年11月に、改革を求めて歳費法改正案を共同提出した。
 しかし、自民党内には実質的な収入減少につながるとして抵抗感が強いようだ。領収書の必要がなく、使い勝手のよさが指摘され、派閥活動や事務所経費への流用が取り沙汰される。日割り支給とした際には、名称変更に合わせて使途拡大が図られ、使いやすくしただけとの批判が上がったほどだ。
 先の国会でも議論が深まることはなかった。岸田文雄首相は各党の協議で本格的な論戦が進むことを期待したいと述べている。しかし、主導する意欲はうかがえなかった。
 税金が充てられる政治資金は、どのような使われ方をしているのか透明性を高める必要がある。こうした市民の思いを受け止め、地方議会の多くは旧文通費に近い政務活動費の使途を公開している。国会がそうした要請に応えられないのでは怠慢のそしりを免れない。
 国会が自らに甘いお手盛りの姿勢をとっていては、チェック機能が高まるはずはない。予算を巡っては、具体的な使途をあらかじめ定めず、内閣の裁量で使途が決められる予備費が膨張している。また、審議時間が限られる補正予算への巨額計上も目立つ。これでは財政民主主義が揺らいでしまう。
 岸田政権は防衛費や少子化対策の予算の増額を打ち出すが、財源論議は先送りしている。予算規模が先走っては、施策の安定的な継続はおぼつかなくなる。政策の是非を判断するには財源を交えて議論することが欠かせない。
 財政が厳しい中で、国民負担が増大するのではないかとの警戒感は根強い。同時に、旧文通費に対する見方は厳しい。政治の側は、まずは自らの姿勢を正す必要がある。曖昧にしてはならない。

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