2023.06.26 08:00
小社会 裏切り
関ケ原の戦いで西軍を裏切った秀秋は、21歳の若さで死去した。死因には奇怪な伝説が多いという。一つは、急襲され「人面獣心なり。三年の間にたたりをなさん」と恨んで自害した西軍の武将、大谷吉継にのろい殺されたという説。
このほか「殺生禁止の川で魚を捕って落馬」、果ては「農民に急所を蹴りつぶされた」という気の毒な説も。有力な死因は大量の飲酒による病気らしいが、俗説は後世に伝わった裏切りの悪評が響いているのかもしれない。
ここ数日、テレビから「裏切り」の声が聞こえてきた。ウクライナ侵攻を続けるロシアで、創設者プリゴジン氏が率いる民間軍事会社ワグネルが蜂起。プーチン大統領は「裏切りと反逆に直面した」と指弾した。
プリゴジン氏はその後、進軍停止を表明。いまは戦争の早期終結に関わるような動きには見えない。ただ、ワグネルは中東やアフリカにも雇い兵を送り、政権の利益に沿ってきた「子飼い」だ。プーチン氏の威信は揺らぐのかどうか。
侵略戦争が長引く。2度の大戦の惨禍を経て戦争の違法化を進めた国際社会への裏切り、後世の悪評。独裁者にはどちらも自覚してほしいものだが。