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2023.06.25 08:00

【性犯罪の法改正】「不同意は罪」認識広げよ

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 性犯罪の処罰規定を見直した改正刑法が成立し、同意のない性行為は犯罪になることが明文化された。処罰されるかどうかの判断基準は、より被害者寄りになり、処罰対象となる行為の範囲も広がる。
 「魂の殺人」とも呼ばれる性犯罪に対し、被害者の声を受け、厳格な姿勢を示した。捜査機関や裁判所は法改正の趣旨を踏まえ、被害者視点での適切な運用が求められる。
 これまでの強制性交罪などは「被害者の抵抗を著しく困難にする程度の暴行・脅迫」を成立要件とした。しかし「抵抗の度合い」は、立証するのも判断するのも難しさがあり、被害者が恐怖で抵抗できないケースもある。実態に即していないとの批判が被害者側から出されていた。
 法改正後は「不同意性交罪」に名称を変更。文字通り、同意の有無が判断基準になる。
 具体的には、「同意しない意思の形成や表明を困難にさせた状態」での性行為を処罰対象とし、それに至らせる要因として「暴行・脅迫」のほか、「アルコール・薬物の摂取」「上司・部下などの経済・社会的関係」など8項目を例示した。
 基準が明確化することにより、加害者側の都合の良い解釈が認められる可能性は低くなる。課題とされていた裁判での判断のばらつきなども減るとみられる。
 ただ、内心が絡む事案の性格上、曖昧さを完全に取り除くことができないのも事実だろう。不当に処罰されるケースがないよう、丁寧な運用を心がけ、事例の検証も重ねていく必要がある。
 今回の法改正は、2019年に性犯罪の無罪判決が相次ぎ、当事者たちが花を手に性暴力撲滅を訴える「フラワーデモ」が全国各地に広がったことなどを機に、動きが加速した。市民のアクションが状況を動かしたと言える。
 被害者団体は法改正を「社会の価値観が変わる」と評価する。重要なのは、同意のない性行為は許されないとの価値観を広げ、性被害や性犯罪が起こることを未然に防いでいくことだ。法改正の周知、浸透を急がねばならない。
 法改正ではほかに、性犯罪の公訴時効を延長し、不同意性交罪は5年延長して15年とした。これに対し、性被害は自責の念や羞恥心から被害申告には時間がかかるとして、まだ短いとの指摘もある。
 スマートフォンの普及で社会問題化している盗撮行為を対象に「性的姿態撮影罪」も新設され、都道府県ごとの迷惑防止条例違反などを適用する現状より、摘発範囲は広がり、刑罰も重くなった。ただ、アスリート関係者らが求めるユニホーム姿の撮影は、今回は対象外となった。
 ジャニーズ事務所での性加害疑惑でも明らかになった、立場の弱い子どもへの対策も新たな対応が求められている。
 性被害撲滅に向けては、なお検討課題が残っている。今回の法改正がゴールではない。幅広い事案に継続的に目を向ける必要がある。

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