2024年 04月29日(月)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2023.06.24 08:00

【刑務所暴行問題】今度こそ変わらなければ

SHARE

 刑務所は、犯罪者が再び罪を犯さないよう更生させ、社会に復帰させる施設である。その刑務所が再び過ちを犯すのは論外である。指摘を重く受け止め、今度こそ変わらなければならない。
 名古屋刑務所の刑務官が受刑者に暴行を繰り返していた問題で、法務省の第三者委員会が再発防止策の提言書をまとめた。
 暴行は2022年8月、名古屋刑務所で受刑者の1人が左目付近を負傷しているのが確認され発覚した。調査の結果、21年11月~22年9月、刑務官22人が受刑者計3人に対し暴行や暴言を重ねていた。
 第三者委は、刑務官に通信機能付きの装着式カメラを導入し、監督者に相談できるようにする▽受刑者の差別的な呼び方の禁止▽外部の支援者らが受刑者と面接する際、処遇に不満が出た時は迅速に対応する▽受刑者の特性に応じて収容施設を振り分け、刑務官の負担を軽減する中長期的対策―を提言した。
 名古屋刑務所を巡っては01~02年にも受刑者の死傷事件が発生。大きな社会問題になった。
 それを受け03年に行刑改革会議が「国民に理解され、支えられる刑務所」に向け、刑務所改革案を提言した。受刑者処遇法(現・刑事収容施設法)の施行にもつながった。
 ところが、同じ刑務所で再び問題が起きた。教訓や提言が生かされていなかったと言わざるを得ず、深刻に受け止める必要がある。
 しかも刑務官22人中17人が採用3年以内の20代だった。
 刑務所では規律が重視されるが、名古屋刑務所は暴力団員ら対応が難しい収容者が多い。今回の提言書も、行き過ぎた規律重視の風潮と希薄な人権意識が問題行為の一因になったと指摘する。
 特に若手は孤独に職務を遂行する状況に陥っていたようだ。暴行や暴言を誘発しやすい職務環境にあったと言え、改善が急務だ。
 日本の行刑制度はいま、大きな転換期を迎えている。刑務作業が義務付けられている懲役刑と、義務付けられていない禁錮刑を一本化した「拘禁刑」が25年までに導入される予定だ。
 これにより、刑務作業に縛られることなく、受刑者の特性に応じた更生プログラムが導入できるようになるという。刑務所が受刑者の更生や社会復帰をより重視する施設になることを意味する。
 03年の行刑改革会議が強調している。「受刑者が、真の意味での改善更生を遂げ、再び社会の担い手となるべく、人間としての自信と誇りをもって社会に復帰することが、最終的には国民全体の利益となる」
 刑務官の行き過ぎた言動は受刑者の更生意識をも阻害しかねない。今回の提言書は、名古屋刑務所以外の施設でも不適切な言動があると指摘している。法務省には抜本的な対策が求められる。
 社会における刑務所、刑務官の役目とは何なのか。それが改めて問われている。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月