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2023.06.23 08:00

【マイナ混乱】急いだ普及の重いつけ

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 総点検を迫られるのは導入を急いだつけであり、制度設計の甘さを露呈した格好だ。不信感はずさんな情報管理だけに向けられているのではない。それを認識しなければ混乱収拾は望めない。
 政府はマイナンバーに関する省庁横断の情報総点検本部を設置した。マイナンバーカード取得者向けサイト「マイナポータル」で閲覧できる全29項目を対象に、データに誤りがないか秋までに洗い出す。
 マイナンバーを巡り、マイナ保険証に別人の医療情報がひも付けされたり、年金情報を他人が閲覧したりする事案が発生している。ほかにもコンビニでの別人の住民票写しの発行やマイナポータルの不具合、同姓同名の別人へのカード誤交付などが起きている。
 カードの普及は当初は低調だったが、国民の7割強にまで広がった。政府がマイナポイントなどで後押ししたことで急増した。
 しかし、住民の手続き窓口となる自治体の負担は大きかった。本人特定の作業が十分に行われず、また多くの作業を1人で行っていた事例もあったようだ。対応が追いつかず、人物の取り違えや確認不足による交付など人為的ミスが多発した。新型コロナウイルス感染への対応も求められる中、自治体の事務処理能力を勘案しないまま普及を急がせた責任を認識する必要がある。
 今回打ち出した総点検は、マイナンバーを扱う関係機関や自治体と連携して作業を進める。マイナンバーのひも付け作業をどのようなチェック体制で行っているか確認し、点検結果は8月末に中間報告をまとめるとする。確認は急ぐ必要があるが、教訓を生かすことだ。現場の実態に即した対応をとらなければ混乱は繰り返されかねない。
 政府は2024年秋に健康保険証を廃止してマイナ保険証に一本化する方針を打ち出している。これに対し、世論調査では7割強が延期や撤回を求めている。デジタル機器に不慣れな高齢者に特に保険証廃止への懸念が広がる。
 しかし、岸田文雄首相は予定通り進める考えを重ねて表明した。国民の不安払拭のための措置が完了することが、全面廃止の大前提と位置付ける。廃止後も最長1年間は現行保険証が使える経過措置の期間に、不安の払拭に努める意向を示す。それ自体は当然だが、期日ありきの取り組みでは信頼回復は難しい。
 そもそも、保険証を廃止する意図や、マイナ保険証に一本化する必要性の説明が不足したままで、理解が進んでいるとは思えない。行政のデジタル化が迫られる一方、カード利用拡大で個人情報が流出する懸念は拭えず、情報管理の在り方を見直すよう求める意見も根強い。マイナンバーの根幹に関わることであり、慎重な対応と再検討が必要だ。
 先進7カ国首脳会議(G7サミット)などで持ち直した内閣支持率は再び低下した。マイナンバーを巡る混乱が影響したとみられる。関心の高さを十分に受け止めることだ。

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