2024年 04月29日(月)

現在
6時間後

こんにちはゲスト様

高知新聞PLUSの活用法

2023.06.22 08:00

【通常国会閉幕】首相は説明から逃げるな

SHARE

 通常国会が閉幕した。
 岸田文雄首相は昨年末、歴代政権が堅持してきた重要政策を国会や選挙で十分に説明せず、国民的な議論や合意がないまま大きく転換した。
 「専守防衛」が形骸化しかねない反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有、防衛費の大幅増、東京電力福島第1原発事故の教訓の下で掲げてきた「依存度の低減」からの「原発回帰」がそれに当たる。
 政府は国民の疑問を解消するよう説明に努め、立法府は国民の負託を受けて行政監視の使命を果たす―。今国会は、本来あるべき姿がより問われたはずだ。しかし、国民の疑問は解消されたとは言い難い。
 反撃能力では行使例を示すよう要求する野党に対し、首相は「手の内を明かせない」と繰り返し、米国製巡航ミサイル「トマホーク」の取得数を説明する程度にとどまった。
 国会終盤には、防衛費の大幅増に向けた財源確保法が与党などの賛成多数で成立した。ただ、政府が示した歳出改革や税外収入といった財源確保策は、具体的な根拠が曖昧なままになっている。
 防衛増税の実施時期も、国会の最終盤になって「2024年以降」からの先送り論が浮上。防衛費に23年度からの5年間で総額約43兆円を投じる「規模ありき」の財源探しは、なお不透明感が漂う。
 首相は「異次元」の少子化対策でも施策のメニューは示したものの、裏付けとなる財源の具体策については結論を年末に持ち越した。
 国会終盤には、衆院の「解散カード」をちらつかせた。財源の明示を先送りにするのは、次期衆院選で不利になる国民負担増の明示は避けたい与党への配慮も透ける。
 だが、財源の裏付けを欠く政策は空手形にすぎない。重要政策の全体像、国民生活への影響を説明しないまま信を問うのであれば、国民に対して極めて不誠実である。
 原発の60年を超える運転を可能にする「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」も成立した。ただし、どの原発の運転がいつまで延長され、何より本当に安全なのか、疑問は解消されていない。政府が送電網整備まで幅広く盛り込んだ「束ね法」にした影響もあり、議論は低調に終わった。
 うやむやにされたままの宿題も多い。例えば、昨年来問われる世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党の関わりでは、地方議員とのつながりも議題に上ったが、首相は実態調査には終始否定的だった。
 国会議員に月100万円支給される調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)の使途公開や未使用分返納は、またも進展がなかった。
 国民の疑問が解消しない要因には、足並みのそろわない野党の非力もある。しかし、まずは自民党総裁である首相が国民を意識し、指導力を発揮する必要がありはしないか。
 首相は就任以来、「丁寧な説明」の重要性を繰り返してきた。その実践がなければ、政治に対する国民の不信は拭えまい。

高知のニュース 社説

注目の記事

アクセスランキング

  • 24時間

  • 1週間

  • 1ヶ月