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2023.06.22 08:00

小社会 国策というレール 

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 集団就職で都会へ向かう金の卵たちは、どんな気持ちで列車に揺られたのだろう。映画「ALWAYS 三丁目の夕日」は東京の下町にある自動車修理工場に入社する、六子(むつこ)の上京シーンで始まる。

 きっと、慣れない都会での生活、初めての仕事への不安にさいなまれていたに違いない。それでも、将来への小さな希望は胸に抱いたのではないか。時は1958年。日本経済は高度成長期に入っていた。

 ちょうどその頃、国策というレールを走る差別の「暴走列車」もピーク時を迎えていた。終点は夢や希望、時代の高揚感とは無縁の悲劇。そうとは知らない多くの被害者が無理やりに乗せられた。

 旧優生保護法(48~96年)の下で、障害や疾患のある人らが不妊手術を強いられた戦後最大の人権侵害。国会がまとめた初の調査報告書には愕然(がくぜん)とさせられる。

 被害者は2万5千人に上り、10歳に満たない子どももいた。人としての尊厳を奪う行為でありながら、国は都道府県に件数を増やすよう通知も出していた。法律が差別の物差しになると、社会はこうも簡単に理性を失い、残酷になれるのか。

 報告書の公表から2日後のきのう、国会は調査をまともに総括もせず閉幕した。救済法による一時金の請求期限は来年4月に迫り、責任の所在も曖昧なまま。被害者は暗く長いトンネルの中に取り残されたような心境ではないか。いつになったら一筋の光が届くのだろう。

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