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2023.06.21 08:00

【米中会談】関係安定へ対話を重ねよ

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 双方の立場の溝は深く、大きな歩み寄りは期待できなかっただけに、対話へ踏み出したこと自体が成果だと捉えるべきかもしれない。根深い相互不信の解消へ、対話を積み重ねることが重要だ。
 ブリンケン米国務長官が北京を訪問し、中国の習近平国家主席らと会談した。ブリンケン氏訪中は今年2月に中国の偵察気球が米上空に飛来した問題を受け、直前で延期されていた。バイデン政権発足後、国務長官を含めた閣僚の訪中は初めてで、米中関係の冷え込みを物語る。
 習氏に先立ち会談した秦剛国務委員兼外相は、米中関係は国交樹立以来、最悪だと指摘した。また王毅・共産党政治局員は、台湾問題で妥協や譲歩の余地はないことを強調し、米国をけん制した。
 そうした強硬姿勢の一方で、ワシントンでの外相会談に合意するなど高官の対話継続の方針では一致した。注目された習氏との会談が実現したことからも、決定的な対立を避けたい双方の本音が見て取れる。
 中国は貿易経済分野の立て直しを急ぐ。新型コロナウイルス感染を徹底的に抑える「ゼロコロナ」政策の終了で経済活動の回復を見込んでいたが、盛り上がりを欠いている。若者の雇用問題は深刻だ。物価高抑制へ利上げに動く欧米とは反対に、景気刺激へ金融緩和に踏み切った。
 米国は経済安全保障上の懸念から供給網の脱中国化を進める。半導体や製造装置は輸出規制を強化した。中国は包囲網を批判し対立を強めるが、経済対話は欠かせない。関係改善への糸口となる期待もある。
 だが、中国が軍事的圧力を強める台湾情勢など、最大の懸案である安全保障分野では両国の利害が対立したままだ。米側が打診した6月初旬の国防相会談は中国側が拒絶した。中国国防相に科している制裁解除へ向けた揺さぶりともみられる。
 このままでは偶発的衝突が起こりかねず、国際社会の懸念は強い。台湾海峡や南シナ海では米中の軍艦や軍用機の異常接近が発生した。衝突回避へ当局間の意思疎通を確保する必要がある。軍同士のハイレベル対話を再開させ、関係の悪化に歯止めをかけることが不可欠だ。
 しかし、中国は台湾問題は内政と位置付け、武力統一を排除しない強硬姿勢を貫く。バイデン政権は台湾海峡の平和と安定の重要性を訴え、挑発的行為に懸念を示す。抜本的な局面打開は簡単ではない。
 中国はウクライナ侵攻を続けるロシアと親密で、和平への関与が期待されるが十分ではない。偵察気球問題の主張は平行線をたどり、香港民主化運動やウイグル族への抑圧など人権分野でも主張は対立する。キューバでの情報収集施設の設置疑惑も浮上している。懸案は数多い。
 ブリンケン氏の訪中は、バイデン米大統領が意欲を示す習氏との会談への地ならしの側面があった。年内開催が視野に入るようになった。米中が衝突すれば影響は世界に及ぶだけに、首脳会談を実現させ、関係を修復軌道に乗せていきたい。

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