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2023.06.20 08:00

【陸自施設の銃撃】徹底検証して再発防止を

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 岐阜市にある陸上自衛隊射撃場で起こった自動小銃による殺人事件は、自衛隊の武器管理や安全対策が絶対ではないことをさらけ出した。安全管理態勢や隊員教育の在り方などを検証し、再発防止に全力を挙げる必要がある。
 事件は射撃訓練中に起こった。自衛官候補生の18歳の男が、男性隊員3人を撃ち、2人が死亡、1人が重傷を負った。
 男は4月に入隊し、自衛官になるための基本的な訓練を受けていた。殺人容疑で送検され、調べに対し、死亡した上官に叱られたといった趣旨を供述しているという。
 自衛隊員は国民の安全を守るとの目的の下、厳格に統制・管理される前提で武器を使うことが許されている。その前提が崩れてしまうと、地域や国民にも大きな不安を与える。今回のような事件は、武器を扱う組織としては絶対にあってはならず、原因の徹底解明が求められる。
 これまでの調査によると、男には「素行に問題があった」との同僚らの証言はあるものの、被害者全員と日常的に接点はなかった。経緯や動機はなお不透明だが、殺傷能力のある武器を扱う適性をしっかり見極められていたか、確認が必要だ。
 隊員の資質という点では、少子化などの影響で採用時の応募者が減っていることが影響しているのではないかとの指摘もある。そうだとすれば、採用活動や基礎教育、適性判断などの課程に何らかの見直しを加えることも検討するべきだ。
 システム的に安全管理態勢が確立されていたか、実際の運用時に緩みがなかったのかも、振り返らなければならない。
 射撃訓練の規則では、銃に弾を装塡(そうてん)するのは射座と呼ばれる射撃位置に移動した後と定められているが、今回は男が射座に着く前に弾を詰めて撃った疑いがある。指示された以外の行動をとるのは難しい指導態勢も敷いているとして、陸自内部から「規則通り行われていればあり得ない」との声も上がる。
 緊張感を欠く状態で訓練が行われた可能性があるということだろう。陸自は全国の部隊にいったん、射撃訓練中止と安全管理の徹底を指示したが、当然の対応だ。各施設の訓練やオペレーション全般にまで、チェックや啓発を広げるべきだ。
 自衛隊を巡っては近年、重大事故が続いている。4月には沖縄県の宮古島周辺で陸自ヘリコプターが墜落し、10人が死亡した。1月には山口県周防大島町沖で海上自衛隊の護衛艦が座礁。一昨年2月には足摺岬沖で、海自の潜水艦と貨物船が衝突事故を起こしている。
 また昨年は、元陸自の女性隊員が性被害を受けた問題で5人が懲戒免職になり、組織内の1400件以上のハラスメントも表面化した。
 組織と人材が健全性、規範意識をを欠いた状態では、防衛費倍増による防衛力の抜本強化方針も、危うさばかりが膨らむ。国民が信頼できる組織づくりへ、真摯(しんし)な対応が求められる。

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