2023.06.17 08:00
【骨太方針】財源先送りは説得力欠く
政府は経済財政運営の指針「骨太方針」を決定した。新型コロナウイルス対策で膨らんだ国の歳出構造を平時に戻すとした一方、重要施策は増税回避の姿勢を鮮明にした。
国の一般会計歳出は2019年度以降5年連続で100兆円を超え、国債発行残高は1千兆円を突破した。多様な課題に対応する財源を確保しながら、持続可能な財政運営を行うとする姿勢に違和感はない。
新型コロナは感染症法上の位置付けが5類に移行した。コロナ関連の基金や地方自治体向けの交付金を見直すとする。余剰分は他の施策に振り向ければいい。ただ、5類下での感染者増加が医療や社会経済にどう影響するのか、十分に見極めた対応をとることが重要だ。
財政は大きな赤字から脱却できずにいるとの現状認識を示しつつ、同時に重要な政策の選択肢を狭めることがあってはならないとの方針を打ち出す。これを釣り合わせるポイントを探る必要がある。しかし、大幅な増額を見込む防衛や少子化対策の財源議論を先送りしたように、そうした姿勢がうかがえない。
先頃決定した「こども未来戦略方針」は、児童手当の拡充などを盛った。少子化対策を「最も有効な未来への投資」と位置付けるなら、その道筋は曖昧にはできないはずだ。
27年度に向けて予算を大幅に増額する防衛分野では、新鋭兵器の研究開発や情報戦への対応強化などを掲げる。防衛費増額の財源を確保する特別措置法がきのう成立した。税外収入の活用を定めるが、野党は今後も安定して確保できるか不透明だと批判してきた。防衛費増額の是非はもとより、負担の具体像を封印していては議論が深まらない。
予算の単年度主義の是正も掲げた。たびたび弊害が取り上げられるように、継続的な財政支出は効率的な運営が期待できる。一方で対策の規模優先につながることが指摘され、不要不急の支出が増えて財政を悪化させる恐れがある。
使途を事前に定めない予備費が巨額化し、また審議時間が限定されがちな補正予算での巨額計上が問題視されている。国会の監視を避けていては財政民主主義を弱め、弊害是正という目的はゆがんでしまう。
国と地方の基礎的財政収支を25年度に黒字化する目標は維持するものの、達成は困難だ。改革の進捗(しんちょく)を点検・検証するにしても、楽観を排さなければ先送りが繰り返される。
財政健全化の「旗」は下ろさず、健全化目標に取り組むとするのはいいが、果たしてやる気や責任感はどれほど強いのだろう。成長と分配の好循環を実現し、持続的な賃上げにつながるよう成長戦略を実践することも欠かせない。山積する課題と真剣に向き合うことだ。