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2023.06.11 08:00

【女性版骨太方針】「看板倒れ」から抜け出せ

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 女性が能力を最大限発揮できる職場づくりは、経済的な競争力の向上だけでなく、多様な働き方の尊重にもつながっていく。日本は取り組みの遅れが指摘されており、加速させる必要がある。
 政府が、女性活躍社会に向けた「女性版骨太の方針2023」の原案をまとめた。東京証券取引所で最上位の「プライム市場」に上場する企業の女性役員比率を、2030年までに30%以上とする目標を設定することを柱とし、達成へ行動計画の策定を促す。
 内閣府によると、日本の企業役員に占める女性比率は欧米先進国の半分以下の水準の15%程度であり、また、プライム上場企業の約2割には女性役員が一人もいない。
 そうした中、日本をけん引する企業群が、女性活躍の風潮や価値観を広げ、そのための働き方や人事改革を具体化させれば、国内全体への波及も見込める。漫然と改革を呼び掛けても効果には限界があり、時期や数値目標を示して誘導するのは一つの手法だろう。
 性別を問わず誰もが活躍できる環境は、実際の経営でも、対外的な評価でもプラスに働くことが多く、企業も積極的に取り組めるはずだ。
 ただ、政府の方針案は、女性登用の度合いで企業価値が判断される国際動向を強調しており、投資を呼び込むためとの観点が先立っている感もある。本来なら、制約を受けてきた女性一人一人の視点で議論し、企業や社会が自発的に取り組むべきテーマである。そうした認識を欠いてはならない。
 方針案では、男女の賃金格差の是正にも一歩踏み込んだ。昨年度の方針案では、従業員301人以上の企業を対象に、男女別賃金差の情報開示を義務付けたが、今回は101人以上の企業に対象を広げた。
 もっとも、女性活躍は「看板倒れ」と言われる状況が続いているのが実態だ。12年の第2次安倍政権発足から掲げられ、15年には、企業や行政に女性の登用目標などの策定を義務付けた女性活躍推進法を成立させたが、目標の下方修正や先送りするケースが目立っている。
 国際機関が発表した22年版の「ジェンダー・ギャップ報告」では日本は146カ国中116位に位置し、とりわけ、経済と政治分野が足を引っ張っている。今回の女性版骨太方針も含めて、取り組みの実効性が強く問われる。
 現実的には、なお、「男性は外で働き、女性は家を守る」といった固定的な性別の役割分担意識があり、それに基づく「昭和型」の制度が残っていることは否めない。
 年功序列の慣行に基づいて中高年の男性が強い発言力を持ち続けていたり、家事・育児の負担が女性に偏る中で柔軟な働き方ができなかったり、さまざまな問題が現場にある。
 職場レベルの運用で改善できるもの以外に、制度の抜本見直しが必要なケースもあろう。政府、企業それぞれが、掲げた目標に向けて責任を果たさなければならない。

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