2023.06.09 08:35
遍路に魅せられ、仙台から移住女性が土佐清水市に宿開業 巡礼6巡目の経験生かし「お返し」
遍路宿を営む庄子美智子さん。お遍路さんとの夕食の時間も楽しみの一つ (土佐清水市の「お遍路宿 草々」)
仙台市出身の庄子美智子さん(50)。幼い頃から甲状腺の疾患など複数の持病を抱え、入院と手術を繰り返した。20代にはうつ病やパニック障害を発症。断薬に伴う離脱症状にも苦しんだ。
願掛けも込めて8年前に始めた歩き遍路は、人生の転機になった。「倒れそうになるくらいきついけれど、体のエンジンがかかって心身が浄化されていく」感覚に魅了されたという。
数々の接待にも触れた。初めての巡礼では、100円玉を握らせてくれた高齢女性の笑顔を見て、涙が止まらなかった。「おばあちゃんが仏さんに見えて…。親切は、何倍にもなって幸せをくれるんです」
「あったらいいな、と自分が思った宿をつくりたい」と、3年前から県内各地に〝お試し移住〟。遍路道沿いで空き家だった今の物件を見つけ、昨年11月に「お遍路宿 草々(くたくた)」を開いた。朝夕食付きで1泊3千円から。個室3部屋を構える。
遍路の大変さを知っているから、客との話に花が咲く。見送る時は寂しいが、その後、近況報告をくれる人もいる。
接待を受ける側から、今度は接待する立場に。「もらったものほど、まだお返しできていないんですけどね」。控えめに語るその表情には、感謝の気持ちがあふれている。(小笠原舞香)