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2023.06.07 08:00

【対立深まる米中】衝突回避へ対話を探れ

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 偶発的な軍事衝突の危険性は排除しなければならない。大国の対立は重大な結果を招きかねず、対話再開の道を探ることが重要だ。
 アジア安全保障会議は、期待された米中国防相会談は実現しなかった。米国の呼びかけを中国が受け入れなかった。
 中国軍は台湾周辺や南シナ海で軍事活動を活発化させ、米軍は航行して、自由で開かれたインド太平洋への関与を示す。米軍が中国の偵察気球を米上空で撃墜した問題でも関係は冷え込んだ。対立が激化する中、緊張緩和は急務となっている。
 中国の李尚福国務委員兼国防相は演説で、米国のインド太平洋戦略が排他的な軍事同盟であるアジア太平洋版の北大西洋条約機構(NATO)の形成を推進していると批判した。こうした中国包囲網に対抗して、国際秩序構築を主導する意欲を表明した。 
 また李氏は台湾問題を内政干渉であり容認しないと強調し、台湾統一に向け武力行使を辞さない方針を重ねて示した。オースティン米国防長官はこれに先立つ演説で、台湾海峡で紛争が起きれば「壊滅的」な結果をもたらすとして、平和と安定に関与する姿勢を崩していない。対立が和らぐ気配はうかがえない。
 ただ、李氏は米中の関係安定の重要性に言及し、オースティン氏も紛争が差し迫っているわけではないと述べている。対立を決定的なものにしたくないのが本音だろう。
 米側の要請した正式な国防相会談が実現しなかった要因には、ロシアからの武器調達を巡り李氏に制裁を科したことも指摘される。米国が制裁解除に応じるようでは姿勢が疑われかねない。互いに引けない状況が事態を硬直化させている。
 こうした間に台湾海峡では、米ミサイル駆逐艦に中国軍艦が異常接近する事案が起きた。米側は海上のルールに違反すると批判した。予想外の事態につながりかねず、挑発的行為を慎むべきだ。
 一方、浜田靖一防衛相は李氏と会談し、日中の防衛当局間の意思疎通を継続する考えで一致した。また、対話や防衛交流の促進を申し合わせた。不測事態を回避するため取り組みを強化する必要がある。
 防衛相は、中国軍とロシア軍が日本周辺で共同活動を継続していることや、沖縄県・尖閣諸島を含む東・南シナ海情勢に深刻な懸念を伝えた。これに対し李氏は、台湾問題は内政問題で干渉しないようにけん制した。立場の違いは鮮明だ。
 日米韓3カ国の防衛相は、北朝鮮弾道ミサイル問題を討議したほか、中国を念頭に自由で開かれたインド太平洋を推進し、力や威圧による現状変更に反対する姿勢を打ち出した。日米とオーストラリア、フィリピンの4カ国は、太平洋を取り囲む形で連携をアピールしている。
 中国は国際情勢の安定に貢献すると主張するが、それには摩擦の解消が欠かせない。気球問題で延期されたブリンケン国務長官の訪中など、対話の環境を整えていきたい。

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