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2023.06.07 08:00

小社会 息子・上岡龍太郎さん

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 上岡龍太郎さんの声を懐かしく思いだす。ラジオやテレビから夢中で聴いた。

 某テレビ番組。上岡さんをやり込めようと「つるかめ算の問題です」とニヤける笑福亭鶴瓶さん。「UFOが12個飛んでます。アンテナが全部で45本、鶴号2本亀号5本。鶴号と亀号は何個ずつでしょう?」

 上岡さんはねちねちと逆襲する。「鶴号て何で分かるの? UFOとは未確認飛行物体でしょう? 鶴号てことは確認されているわけでしょう、ならそれはUFOではない。未確認やからアン、アイデンティファイドフライングオブジェクト!」「やかましい、理屈やない」「算数から理屈抜いたら何も残らんやないか君」

 上岡さんの父親、小林為太郎は土佐清水市の出身。極貧農家に育ち、ある時畑で鍬(くわ)をぽーんと放り投げる。「勉強がしたい。貧乏人が対抗するには知恵しかない」。旧制高知高から京大へ進み、庶民派の熱血弁護士となる。

 上岡さんの講演録や文集によると「父は理論派だが法廷でもむちゃを言い、制服と権力が嫌いで、金もうけが下手で照れ屋で本好きで剽軽(ひょうきん)で。故郷の訛(なま)りが生涯抜けず、高知の言葉こそ正しい日本語と主張した」。相撲中継を見ながら眠るように亡くなる。最期の一言は「朝潮勝った」。

 希代の芸人、上岡さん逝く。博覧強記、即興の語り。庶民の毒と粋も盛る、痛快な話芸が心に残る。遠く仰ぎ見て拝礼。末期(まつご)の言葉は何であったろうか。

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