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2023.06.06 08:00

【少子化対策】安定的な財源を早く示せ

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 子どもを産み育てる若い世代が将来の展望を描きやすい社会をどう実現するか。それには、直接的な子育て支援策はもちろん、負担とのバランスが重要になる。施策の信頼性を高めるためにも、裏付けとなる安定的な財源を国民に早く示さなければならない。
 岸田文雄首相肝いりの「次元の異なる少子化対策」について、政府が素案を公表した。子ども関連予算の倍増は2030年代初頭までに実現すると明記。一方、財源に関しては6月策定の「骨太方針」に反映させるとしてきたが、具体策は示さず、詳細を年末まで先送りした。
 首相は、素案をまとめた会合で、若者の人口が急減する30年代に入るまでが、「少子化トレンド(傾向)を反転できるラストチャンス」と指摘。危機感をあらわにした。
 統計上でも、女性1人が生涯に産む子どもの推定人数「合計特殊出生率」が22年は1・26と過去最低に並んだ。本県も1・36と前年比で0・09ポイント低下している。喫緊の課題であることは明らかだ。
 素案では来年度から3年間、集中して取り組む具体的な施策を「加速化プラン」と位置付け、年3兆円台半ばの追加予算を投入。児童手当は所得制限を全廃するほか、支給を高校生まで延長するなどして24年度中に拡充する。出産費用の保険適用や育児休業給付の引き上げ、高等教育の負担軽減なども盛り込んだ。
 最大の課題はこうした対策を裏付ける財源をどう確保するかだが、政府は明言を避けた格好だ。社会保険料への上乗せを念頭に「支援金制度」を創設、歳出削減で確保するとしつつ、安定的な財源は28年度までに確保するとした。不透明感は拭えない。
 首相が消費税などの増税を否定する中、政府は社会保障の歳出削減を想定しているとみられる。しかし、高齢化が進む現状で削減は容易ではあるまい。少子化対策は重要だが、医療や介護などの財源が削減されては、新たな将来不安につながりかねない。財源に必要となる金額ありきの議論となれば、懸念も膨らむのではないか。
 素案段階に至ってもなお、新たな負担がいつからどの程度必要なのかも分からないようでは、国民が施策の信頼性や安定性を評価することは難しい。
 財源を曖昧にしたままの政府の姿勢に、衆院の解散・総選挙をにらんだ「負担隠し」との指摘もある。もしそうだとすれば、国民に対して極めて不誠実な対応というほかない。負担と施策は一体として議論するべきだろう。
 少子化傾向を反転させるには、今回の柱となった結婚した世帯への直接的な支援以外にも課題が多い。少子化対策の大きな要因として、未婚の増加も指摘されている。
 若者が希望通り結婚や子育てをするには、安定した経済・雇用環境なども不可欠だ。若者が将来への不安を払拭できるよう、さらに広い視野で対策を進める必要がある。

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