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高知新聞PLUSの活用法

2023.06.04 08:00

【NHK問題予算】公共放送の信頼を失う

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 衛星放送であるBSのインターネット配信が認められていないNHKが、関連経費約9億円を不適切な方法で2023年度予算に盛り込んでいたことが分かった。
 一部の役員のみで判断し、予算を計上。最高意思決定機関である経営委員会にも説明しておらず、23年度予算は国会の承認を受け、成立していた。
 NHKは公共放送であり、経営は視聴者に義務づけられている受信料で成り立っている。法令順守は言うまでもなく、透明性の高い経営が求められる。
 今回は明らかにそれらに反しており、ガバナンス(組織統治)体制が問われる。公共放送の信頼を失いかねない事態だ。NHKには経緯などについて説明責任を果たし、再発を防ぐよう強く求める。
 NHKはインターネット配信サービスとして「NHKプラス」を展開している。内容は総務相が認可した「インターネット活用業務実施基準」に定められ、現状では地上波に限定されている。
 というのも放送法ではNHKの本来業務はあくまで「放送」だ。受信料もテレビ設置者に課されている。ネット配信は放送の補完業務に位置づけられている。
 NHKはネット事業の拡大を要望しており、総務省の有識者組織が検討を進めている。しかし、民業圧迫の懸念があり、受信料論議にも影響する恐れがある。慎重な対応が求められるテーマだ。
 それをNHKは先走った。背景には、来年3月に予定されるBS放送の1波削減があるとの見方が浮上している。視聴者からサービス低下を批判される恐れがあり、BSのネット配信の準備を早めに進めようというものだ。
 そうだとしても禁じ手である。秘密裏に予算化したと言っても過言ではない。全理事が集まる理事会ではなく、一部の理事が稟議(りんぎ)書を回して計上を決めた。問題の予算を知らなかった理事もいたようだ。
 NHKの予算や事業は放送法により、外部の有識者で組織する経営委に諮る必要があるが、その経営委もチェックできなかった。記者会見した森下俊三委員長によると、問題の予算は経営委に示された予算書などにはなかった。
 放送法に抵触する恐れがある。にもかかわらず国会承認まで至る仕組みにも驚かされる。
 23年度予算は今年1月に退任した前田晃伸・前会長の体制下で作られ、稲葉延雄・現会長が就任した後の3月に国会で承認された。問題はその後に発覚したようだ。
 だがNHKは、現体制下でも5月下旬に報道されるまで事態を公表していなかった。組織の体質が問われて当然である。
 総務省やNHKによると、問題の予算は既に是正済みで、今後、弁護士などで構成する検討会を設置し、意思決定の改革を進めるという。体質の見直しも含め、公共放送として緊張感を持った改善が必要だ。

高知のニュース 社説

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