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2023.06.02 08:00

小社会 任命責任

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 「泣いて馬謖(ばしょく)を斬る」は、故事成語の中でもなじみの深い言葉だろう。三国時代の名将、諸葛孔明が、命令を守らず戦に大敗した腹心・馬謖を厳罰に処した、という故事に由来する。

 孔明が仕えた劉備は、「中身以上のことを言う」として馬謖を重用しすぎないよう遺言したという。ところが、孔明は参謀仲間の弟でもある馬謖に目をかけて、大きな戦の先陣に抜てき。それが招いた惨敗であり、孔明は「謖を戮(りく)して以(もっ)て衆(他の兵士たち)に謝し」た。

 「中国の故事・ことわざ」(芦田孝昭著)に続きがある。孔明は、「人を見る明がなかったので、どうか位を下げ自分を罰してほしい」と皇帝に申し出た。自らの不明を恥じ、責任を取ったことになろうか。

 任命責任とは何だろう。思えば2度目の安倍政権では、汚職や失言などで閣僚10人が辞任した。安倍氏はその度に「任命責任は私にある」とは言うが、実際に責任を取る行動はなかった。あのあたりからどうも分からなくなった。

 岸田政権でも昨年、閣僚の辞任が相次いだ。今度は政務秘書官につけた長男の更迭である。首相公邸で親族と忘年会を開き、はめを外したかのような様子が報じられた。当初から公私混同を疑われた登用。馬謖は斬っても、首相が言うけじめはついたかどうか。

 権力のおごりや、政治の劣化がいわれる。厳しく律するには現代の「衆」ともいえる世論が監視し、忘れないことだろう。

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