2023.05.23 08:00
【ウクライナ危機】大統領来日を和平前進に
今回のサミットは「核なき世界」や反戦平和を訴え続ける被爆地・広島にG7首脳らが集う、注目の会議だった。そこへ、いままさに隣国から攻められ、核のリスクにもおびえる国のトップが加わり、平和の一刻も早い回復を訴えた。
ロシアによるウクライナ侵攻は、和平の兆しが見えないまま、長期化の様相を見せている。ロシアと、徹底抗戦のウクライナを支えるG7との敵対関係も深まっている。
状況は厳しいが、ゼレンスキー氏の来日を確かな和平前進につなげる必要がある。これ以上の国際社会の分断や戦争拡大を食い止めなければならない。
ゼレンスキー氏は最近、欧州や中東などに精力的に出向き、諸外国によるウクライナへの支援や支持を強化しようとしている。G7サミット参加もその一環であろう。
特に今回は、広島開催という重みがある上、インドやインドネシアなど「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国の首脳らも招待されていた。ゼレンスキー氏は原爆資料館を訪れ、広島の悲劇とウクライナの惨禍を重ねた。
各国首脳とも相次ぎ会談し、ロシアや国際世論を意識してか、その様子を逐一、交流サイト(SNS)で発信。「世界は私たちの立場に耳を傾けてくれた」とし、「世界の多数派」の理解を得たと総括している。
バイデン米大統領との会談では、米国製F16戦闘機の欧州各国からの供与容認も引き出した。G7、招待国の拡大会合では7月の「平和サミット」開催も提案。ゼレンスキー氏にとって、一定の成果を得た訪日と言っていいだろう。
ただ、現実にはグローバルサウスのどこもがG7やウクライナを支持しているわけではない。招待国のうちブラジルのルラ大統領は記者会見で、米国がウクライナにロシアへの攻撃をけしかけていると批判。ウクライナ問題はG7ではなく、国連で論議すべきだと強調した。
インドや、招待国ではないが中国もロシアとは経済や軍事面で結びつきが強い。G7を中心としたロシアへの経済制裁も十分機能しているとは言いがたい。こうした現状から、戦闘はさらなる長期化が危惧され、国際社会の分断も一層深まる恐れがある。
しかし、国際社会は大国による一方的な軍事侵攻を、武器を持たない市民への攻撃を、決して許してはならない。まずロシアが侵攻をやめる必要がある。核兵器の使用をちらつかせるなどもってのほかだ。
先進国、グローバルサウスを問わず、各国が引き続きあらゆる外交手段や機会を通じ、ロシアを説得していきたい。ウクライナ和平がかなわなければ、「核なき世界」も実現しない。