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2023.05.21 08:00

【ジャニーズ問題】芸能界の性加害にメスを

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 ジャニーズ事務所のジャニー喜多川前社長(2019年死去)による未成年者への性加害疑惑は、優越的な立場を利用した弱者に対する性暴力の典型的な問題だと言える。国内で最も影響力のある芸能事務所トップの行為が曖昧なまま放置されれば、性加害に甘い芸能界、社会を容認することにつながりかねない。実態解明に向けて動くべきだ。
 元ジャニーズJr.の男性が、10代の時にジャニー喜多川氏から性被害を受けたとする問題で、最初の告発から約2カ月を経て、同事務所の藤島ジュリー景子社長が謝罪する動画と文書を発表した。
 事務所側は、告発者の存在を「大変重く受け止める」とし、「事務所の存続が問われる極めて深刻な問題」との認識を示したが、前社長が死去しているとして事実認定はせず、調査のための第三者委員会の設置も否定した。一方的な発信でもあり、これで幕引きにしようとする意図を疑わざるを得ない。
 だが告発が事実なら、児童福祉法に違反し、強制わいせつ罪などに当たる可能性もある行為である。このような中途半端な対応のままでは、事務所のみならず、芸能界のコンプライアンス意識の欠如を露呈することになるのではないか。
 芸能界はもともと性的ハラスメントが起こりやすく、職務上の優越関係を悪用した性被害が絶えない業界だとされてきた。
 声を上げた被害者は仕事を失う恐れがあるため表面化する事例は限られていたが、17年に米の有名映画プロデューサーの性加害をニューヨーク・タイムズ紙が告発し、「#MeToo」運動が世界に拡大。日本でもここ数年、声を上げて被害を訴えるケースが相次いでいる。
 今回の告発もその構図の中にあると言える。前社長は芸能界を代表する人物だっただけに、問題にしっかりとけじめがつけば業界全体にメスを入れることになり、再発防止につながるだろう。逆に、このままだとあしき前例として残る。徹底した対応が求められる。
 問題が起こる背景には、被害者を守る法律や制度が不十分なことも指摘されている。
 今回の被害男性は「未成年者は立場が上の人の要求を拒むことが難しい」として、児童虐待防止の観点から加害を防ぐ法整備を求めた。
 また、芸能界で働く人は実質的にフリーランス(個人事業主)であることが多く、専門家はフリーランスの働き方を守る仕組みを訴える。政府は検討するべきだ。
 性加害の問題はもちろん、芸能界だけではない。家庭内や教育現場での性被害件数は増加傾向にあり、ベビーシッターや保育士による被害も報告される。陸上自衛隊では昨年、被害女性の訴えにより自衛官5人が懲戒免職になった。
 弱い立場の人、声を上げることが難しい人を狙った性加害は許されないとの認識を広げる必要がある。その意味でも、ジャニーズ事務所の問題にふたをしてはいけない。

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