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2023.05.20 08:38

こんもりと花の雲 センダン―ふるさとの花ごよみ(5)

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白=左=と紫、2本のセンダンが子どもたちを見守る(いの町の神谷小中学校)

白=左=と紫、2本のセンダンが子どもたちを見守る(いの町の神谷小中学校)


 緑輝く5月。どっしりと幹を伸ばし、四方に枝葉を伸ばしたセンダンが、薄紫の花を付けている。雲のようにこんもり、もこもこ。無数の花が風に揺れている。

 本県では昔から、街道沿いや学校にセンダンを植えてきた。日傘のように、涼しい木陰をつくる木の下で、旅人らが休んだり、子どもたちが遊んだり。さらに葉は虫よけに、樹皮や果実は煎じて虫下しや整腸に、果肉はすりつぶして肌の塗り薬にと、さまざまに使われてきた。

 薄紫の花を見ると、長さ1センチほどの細く白い花弁が星形に開いている。中央には、筒状の濃い紫の雄しべと黄色い葯(やく)がある。上品で美しい花だ。

 一方で、牧野富太郎博士が「シロバナセンダン」と名付けた、白い花を付けるものもある。

 県内で有名なのが、いの町神谷の神谷小中学校に生えているものだろう。藩政末期に、庄屋が村人の健康のために自宅に植え、学校が建った後も、庄屋をたたえるために残されたと伝えられる。かつては学校敷地内に4、5本のセンダンがあったそうだが、台風で倒れたり、体育館の建設のために切られたり。現在は白と紫の2本となっている。

 ともに3階建て校舎と同じ15メートルほどの高さで、互いに寄り添うように伸び、枝葉の影が校庭を覆う。

 卒業生の思い出話は尽きない。「木に登ると仁淀川がよく見えて気持ちよかったね」「野球をやって、上がった打球が全部センダンに落とされるんよ。“鉄壁の守備”やった」

 在校生にとっても特別な存在のようだ。中学3年の中野紗和さん(14)は言う。「白はお父さん、紫がお母さん。いつも私たちを優しく包んでくれる、家族の一員って感じ」

 同校の校歌には、こう歌われている。

 〈庭のせんだん 年ふりて
  薫るもよしや 白花の
  ゆかりの花の 高き香を
  おのが心に とりもちて
  さやけく生きん
  いざわれら〉

 (佐藤邦昭)

高知のニュース いの町 自然・植物 教育 牧野富太郎

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