「エツコさん」

2023.06.02 05:00

高知新聞社

忘(わす)れても、ちゃんとあったこと
　エツコさんはもと小学校(しょうがっこう)の先生(せんせい)。定年(ていねん)退職(たいしょく)後(ご)は交通(こうつう)安全(あんぜん)のボランティアをしていたこともある。

　だけど近(ちか)ごろは、道(みち)にまよったり、お店(みせ)でお金(かね)のはらい方(かた)が分(わ)からなくなったり、困(こま)ることが増(ふ)えてきた。もと教(おし)え子(ご)のおじさんは“エツコ先生(せんせい)”と呼(よ)び、さりげなくサポートする。

　先生(せんせい)だったころにもどって小学生(しょうがくせい)に優(やさ)しく算数(さんすう)を教(おし)えてくれたり、むすめをむかえに行(い)く、と言(い)って急(きゅう)に出(で)かけようとしたり。エツコさんから見(み)える景色(けしき)と時間(じかん)の感覚(かんかく)は、家族(かぞく)やまわりの人(ひと)をとまどわせることもある。

　近所(きんじょ)の小学生(しょうがくせい)たちは、そんなエツコさんに関(かか)わるうちに、自分(じぶん)たちの悩(なや)みも整理(せいり)されていく。

　エツコさんがこれまで生(い)きてきた中(なか)で見(み)たり、聞(き)いたり、感(かん)じたりしてきたことは無(な)くなってしまうわけではない。これからも積(つ)み重(かさ)なっていく。（ＮＰＯ法人(ほうじん)高知(こうち)こどもの図書館(としょかん)　川崎()美恵子()）

「エツコさん」昼田弥子／作　光用千春／絵　アリス館　小学校高学年以上

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