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2023.05.19 08:00

【日米首脳会談】核軍縮へ連携して道筋を

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 被爆地・広島から核軍縮・不拡散の重要性をいかに発信するかが問われる。厳しくなる安全保障環境を反映して日米同盟は連携強化が進む。緊張を緩和する方策の模索が必要であり、国民への説明も不可欠だ。
 先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)の開催に先立ち、岸田文雄首相はバイデン米大統領と会談した。現職大統領が広島を訪れるのはオバマ氏に続き2人目となる。惨禍を繰り返さない機運を高めたい。
 会談では、サミットの主要議題について認識をすり合わせた。首相は冒頭、法の支配に基づき自由で開かれた国際秩序を守っていくG7の揺るぎない意志を示すと述べた。覇権主義的な動きを強める中国を念頭に、力による一方的な現状変更を容認せず、G7として対処の原則を打ち出すことを目指す。
 今年1月の日米首脳会談では日米同盟の深化への決意を共有した。首相は防衛力強化や防衛費増額の方針を説明した。岸田政権は昨年12月、国家安全保障戦略などを改定し、他国領域のミサイル基地などを破壊する反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有に踏み込んでいる。
 これらを踏まえ、前回会談では反撃能力の開発と運用への協力で一致した。日本は「盾」、米国が「矛」を担う日米同盟は関係を強化し、米軍と自衛隊の相互運用性や連携が向上して一体化が進む。
 安保分野での日本の転換を米政権は歓迎するが、専守防衛の理念は形骸化していく。また、防衛予算は規模が先走り、財源が定まらない。
 一方、核軍縮・不拡散への取り組みは停滞している。ウクライナに侵攻したロシアが核の使用をちらつかせ、中国は米国に対抗できる核戦力を整備する意向とみられる。北朝鮮の核・ミサイル開発も進む。核軍縮に逆行する動きに対抗して抑止力強化の動きも強まっていく。
 国家安保戦略は、核を含むあらゆる能力によって裏打ちされた米国による拡大抑止の提供に言及した。前回共同声明は、核を含むあらゆる能力を用いた対日防衛への揺るぎない責務を表明している。
 サミットが広島で開催される意義を、首相は核兵器の惨禍を二度と起こさない誓いを広島から世界に発信すると位置付けてきた。首相が公表した行動計画「ヒロシマ・アクション・プラン」は、核不拡散体制の強化や核保有国の透明性確保などを盛り込む。その重要性はバイデン氏とも共有する。
 日米が連携して「核兵器のない世界」を追求するために主導的な役割を果たすことが期待される。しかし、「核の傘」を含む拡大抑止の強化を図ることから抜け出せない。そうした姿勢に被爆者らから強い批判が向けられている。
 米国のほか英仏が核保有国のG7で、各国の安全保障を損なわない形での軍縮を目指さないと結束が維持できなくなる。対中関係でも各国の温度差が指摘される。サミットでどこまで踏み込めるか議長国の力量が試される。

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