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2023.05.16 17:39

【インタビュー】中村倫也×伊藤沙莉×日村勇紀×柄本時生 本当の家族みたいな関係に、映画「宇宙人のあいつ」

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 仲良く撮影中の思い出話に花を咲かせる(左から)柄本時生、中村倫也、伊藤沙莉、日村勇紀=東京都港区

※後段にインタビュー全文があります。



 俳優の中村倫也、伊藤沙莉、柄本時生とお笑いコンビ「バナナマン」の日村勇紀が訳ありの“4きょうだい”を演じた映画「宇宙人のあいつ」が19日公開。中村は「役者としても、人としても尊敬する3人と、本当の家族みたいな関係になれた」と撮影を振り返った。


 中村が演じたのは、人類の生態を調べるため地球に潜入した宇宙人。23年もの間「真田家の次男・日出男」になりすまし、兄の夢二(日村)と妹の想乃(伊藤)、弟の詩文(柄本)と暮らしてきた。ついに任期を終えて母星に帰ろうとした矢先、家族にトラブルが相次ぎ、日出男を悩ませる。


 宇宙人としての役作りは「特に何もしなかった」と中村。日頃から「何を考えているのか分からない」と言われることが多く「普通にしているだけで宇宙人らしく見えるみたいなんです」と、はまり役を自任する。


 日村は家族のために全力を尽くす夢二の「熱さ」を意識して演じたという。一つ一つの動きに力が入ったためか「毎日すごく疲れました」。柄本から「すてきなお兄ちゃんだった」と熱演をたたえられ「うれしいな」と顔をほころばせた。


 コメディータッチの作品だが「人間ドラマの部分にも注目してほしい」と伊藤。宇宙人という異質な存在を通して「家族の絆や、人の温かみを改めて感じる作品になった」とアピールした。


 撮影前には中村の提案で飲食店に集まり、一緒にせりふを覚えることで親睦を深めた。柄本は「あの時間があったから、家族として一つになれた」と感慨深げに語った。


(取材・文=共同通信 高田麻美、撮影=平栗玲香)


 ※ここからは4人の素顔や、撮影の舞台裏が伝わるインタビューの全文をお届けします。映画のネタバレはありませんが、中村さんの“重大な秘密”が明るみに…!?



 (1) 2度目の宇宙人役



 ▼記者 中村さんが演じた日出男は「地球人の生態を調べるため、23年間にわたって真田家の次男になりすましていた宇宙人」という設定です。これまでいろいろな役を演じられていますが、さすがに宇宙人役は初めてでしょうか?



 ★中村 2回目ですね。



 ■伊藤 まさかの(笑)。



 ★中村 僕、ほんとにいろんなことしてきちゃってるんで…最近では「初めて」ということはあんまりなくなりました。あ、でも「土星人」は初めてです。



 ▼記者 もはや宇宙人の中で演じ分けをする境地に。



 ★中村 前に宇宙人やった時はホラーみたいな作品だったんで、えたいの知れない感じでやったんですけど、今回は「ほぼ自分」です。いわゆる当て書きの脚本だったこともあって、特に宇宙人らしい役作りみたいなことはしてないですね。



 ▼記者 確かに、宇宙人といっても怖さはありませんでした。



 ★中村 劇中で日出男が自分の立ち位置について「留学生みたいなもんかな」って言い方をして、弟たちから「一緒にすんなよ」って突っ込まれるくだりがあるんですけど、まさにそんな感じで。「ある家族という共同体の中に関係ない人が入って、出て行くことでどんな変化が起こるのか」みたいなことにフォーカスしてやってたんで、宇宙人要素については「言ったもん勝ち」みたいなところで「土星人」って言い張ってましたね。



 ▼記者 土星人の特徴として「首だけで振り向けないから常に全身を使って後ろを向く」とか「実は真田家のWi―Fiをつないでいた」とか、「ノリで書いたのか?」みたいな小ネタの連続が面白かったです。



 ★中村 あの辺はほとんどノリと勢いだと思います。今回、監督・脚本を務めている飯塚健さんは僕が無名の若手時代からお世話になっている方なんですが、いかにも飯塚さんらしい匂いがムンムンする台本で、読んでいてニヤリとしました。



 ▼記者 では、演じる方もノリと勢いで。



 ★中村 そうですね。監督にも「具体的なイメージあるんですか?」って聞いたら「ないよ」って言ってましたし。まあ、そりゃそうです。土星人ですから。



 ▼記者 もしも本当に宇宙人だったとしたら、どんな特殊能力があるといいなと思いますか?



 ★中村 さくっとワープして、世界中の野生動物とお話しして、過去に飛んで歴史や人物に接して学んで、後はおいしいおそばが食べたいです。



 (2) 年下の姉、年上の弟



 ▼記者 そんな日出男の正体を知っていて、ひそかにサポートしていたのが、日村さん演じる真田家の長男、夢二です。この役も割と普段の日村さんのイメージに近いように感じました。



 ●日村 そんな感じしますよね。たぶん監督が僕ら4人に完全に当て書きしてくれたんだと思います。だから僕も「役作りをどうやったのか」って言われても、特別なことは何もしてなくて。まあ台本を読めば、かなり熱い男なんだな、という印象だったんで、その辺は意識しながらやってました。



 ▼記者 焼き肉店の店長という役どころについては?



 ●日村 そこは正直、あんまり考えてないですね。それよりは長男だとか、みんなの親代わりだとか、そっちの方が大きかったかな。ただ、それもお芝居として強く思いながらやってるわけじゃなくて、撮影しながら皆さんとどんどん仲良くなれたので、その雰囲気がそのまま表現できたんじゃないかと思います。



 ▼記者 現場での立ち位置としても日村さんがちょっとお兄ちゃんみたいな感じでしたか。



 ●日村 お兄ちゃん…ではなかったかな。役者としてのキャリアは皆さんの方が圧倒的ですから。どっちが年上とか年下とか関係なく、家族としての一体感みたいなのが現場でつくれたと思います。



 ▼記者 そんなお二人のかわいい妹、想乃を演じられたのが伊藤さんです。



 ■伊藤 アハハ。



 ★中村 かわいいよ。



 ▼記者 コメディータッチな作品の中で「恋人のDVに悩む」という重めのテーマをさらっと背負われていました。



 ■伊藤 重かったですね。想乃ちゃんはとにかく「男を見る目がない」「モテない」というのが最大の特徴になっていて、そこでいろいろ事件が起こったりするんですが、普段の立ち居振る舞いや話し方なんかは私に合わせて作ってくれてたんで、自然に演じることができました。



 ★中村 「男を見る目がない」の部分は当て書きじゃないですからね。念のため。



 ■伊藤 そう。そこじゃないんで(笑)。唯一の心配事だったのが(末っ子の詩文を演じた柄本)時生さんの方が年上なんですよ。五つ上で、私の実の兄(お笑いコンビ「オズワルド」の伊藤俊介)と同い年なんです。



 ●日村 そうなんだ!



 ■伊藤 そう。だから時生さんが詩文になるって聞いて「設定を変えて、私が末っ子になるのかな」って思ってたら、そのままだったので「え、姉? どうしよう」ってなりました。元々すごく末っ子気質なので「兄」と絡むのは得意ですけど、私の方から「お姉ちゃん感」を出すのは難しくて。でも時生さんがとにかく「弟」を前面に出してきてくれたので、私は時生さんに「お姉ちゃん」にしてもらいました。



 ▼記者 では、その柄本さんに。詩文の「末っ子オーラ」をどう出していきましたか。



 ◆柄本 いや、僕も沙莉と同じで「沙莉が姉か~」っていうところからのスタートで。



 ▼記者 でも、役に入ったらすんなり「お姉ちゃ~ん」と。



 ◆柄本 すんなり「お姉ちゃ~ん」ではなかったですけど(笑)。でも台本があって、せりふがありますから、それを言っていけば何とかなるんだろうな、という気持ちでやっていきました。



 ■伊藤 かわいかったよ、詩文。



 (3) 夜の「せりふ覚え会」



 ▼記者 映画の中でも、今この場でも、本当の家族みたいな仲の良さがにじみ出ているように感じられます。皆さん、どのように関係を築いていかれたのでしょうか?



 ●日村 一番引っ張ってくれたのは絶対、倫也君だね。



 ■伊藤 それはありますね。中心となっていろいろとやってくれて。



 ▼記者 と、皆さんおっしゃっていますが、中村さんいかがでしょうか。



 ★中村 …(無言で首を振る)。



 ■伊藤 照れておりますよ(笑)。



 ●日村 自分では言いにくいだろうけど、倫也君、何でもやってくれたから。



 ◆柄本 この4人できょうだいをやることが決まって、すぐSNSのグループを作ってくれたんですよ。で「このお店を予約したから、何時から何時まで日村さんの『せりふ覚え会』しましょう」って。スピード感すげえなって思いました。



 ■伊藤 あれ、ありがたかったよね。



 ◆柄本 そういうことをしてくれたから、僕ら今、こんな打ち解けた感じでいられるんだと思います。



 ●日村 あの夜はでかいよね。僕のためにみんなで集まってサポートしてくれて。俳優さんは普段あんなことしないと思うんですよ。前の日にせりふの練習大会なんて。



 ■伊藤 でも助かりましたよ。



 ◆柄本 あの時に気付いたよね。せりふ合わせって超大切なんだ! って。



 ■伊藤 思った!



 ★中村 楽だったよね。1人で覚えてもつまんないし。具体的に芝居の流れどうこうをやったわけじゃないんですけど、せりふを入れるだけの単純作業だからこそ、みんなでやるとモチベーションも上がるというか。「ここまでせりふ覚えたらもう一杯お酒飲んでいいですよ」とかね。



 ■伊藤 ごほうび形式。



 ●日村 後半、酔えば酔うほどせりふが言えなくなってきてね(笑)。



 ▼記者 お話を聞くだけでも楽しそうです。撮影はほぼ全編、高知県でのロケと伺いましたが、期間はどれくらいだったんでしょうか。



 ★中村 3週間くらい? 唯一、東京でやったのが日村さんのポスター撮り。それ以外はCGも全部、高知でやってます。



 ▼記者 3週間ずっと一緒だと、かなり深い話もできそうですね。



 ●日村 みんなはそうだったんだけど、俺はバラエティーの収録とかあって、ちらほら東京に帰るのよ。



 ★中村 10往復くらいしてましたっけ。



 ●日村 そう。だから、その間に仲良くなられたらどうしようかなって実は不安だったの。戻ってきたら俺の知らない話題で盛り上がってて輪に入れない…みたいなことがあったら嫌だなって思ってたんだけど、このメンバーは「今日、現場で何があった」とか全部(SNSで)送ってきてくれたから。



 ▼記者 日々のささいな出来事を共有して一緒に笑い合うことで「家族としての一体感」みたいなものも培われていったのでしょうか。



 ●日村 だと思いますね。



 (4) 中村倫也の“正体”は…!?



 ▼記者 作中では中村さん演じる日出男が宇宙人という設定でしたが、そこはいったん忘れて、この4人の中で一番「宇宙人っぽいな」と感じる人はどなたでしょうか? 「せーの」で指さしていただきたいんですが、シンキングタイム要りますか?



 ■伊藤 や、要らないです。



 ◆柄本 僕も大丈夫です。



 ▼記者 みなさん即決ですね。ではいきますよ、せーの!



 (中村自身も含め、全員が中村を指さしている)



 ▼記者 すごーい、満場一致!



 ■伊藤 アハハ。だよね。



 ▼記者 中村さんもご自分で指さしてますね。



 ★中村 この中だと俺なのかなあって。



 ●日村 うん。あのね、倫也君はね、人間の喜怒哀楽みたいなのが「スンッ」って消える瞬間というか、僕らとは違うところで反応してる感じがあるんです。虫でいうなら触角みたいな、人と違うセンサー持ってるんじゃないかって感じがね。(中村を見て)ほんとにあるでしょ、何か。



 ★中村 (不敵な笑み)



 ●日村 気遣いとか早いんだもん。常に背中の方まで見えてて、何かあったらすぐフォローしてくれる感じ。これは普通じゃないですね。



 ▼記者 伊藤さんもうなずいていらっしゃいますね。



 ■伊藤 年下の私がこういう言い方するのもアレなんですけど、すごくかわいい方だなあと思いつつ…ほんっとに何考えてるか分からない。人と違う感覚があるっていうのもそうですけど、いろんなことが未知数すぎて。現場でいきなり笑ってたりすると「あ、良かった。楽しいんだ」ってほっとします。



 ★中村 そんな風に思われてるの(笑)。



 ◆柄本 僕も全く同じこと思ってました。



 ●日村 分かる! あの笑い方、宇宙人っぽいよね。



 ■伊藤 よく分からないところでツボに入って突然、笑い出すんですよ。



 ●日村 体も柔らかいしね。脚とかめちゃくちゃ上がるし。



 ■伊藤 軟体動物みたいですよね。



 ★中村 それはあなたたちが硬いだけですよ。



 ▼記者 中村さんご自身では「周りと笑いのツボがズレてる」という自覚はあるんですか?



 ★中村 そうですねえ…人間らしい感覚みたいなのがあんまりないのかな、とは思います。「何考えてるか分かんない」っていうのは若い時からよく言われてきたし。



 ▼記者 逆に周りの皆さんが考えてることが分からなかったりは?



 ■伊藤 いや、それは全部分かってると思う。変な触角で。



 ★中村 (キメ顔で)全部分かってます。



 ●日村 宇宙人というか、未来人っぽいんだよね。



 ★中村 これはねえ、言えないんだけど…実際そうなんですよ。



 ■伊藤 言っちゃったじゃん!



 ▼記者 中村さんの重大な秘密が明らかになってしまいました。



 ★中村 歴史変えちゃうから未来のことは教えられないんだけど…(伊藤を見て)あなた朝ドラやるよ。



 (伊藤は2024年前期のNHK連続テレビ小説「虎に翼」で主演を務めることが既に発表されている)



 ■伊藤 分かってるから。もうちょっと早く教えてほしかった。



 ★中村 (朝ドラに)出してよ。



 ■伊藤 毎回それ言うじゃないですか。



 ◆柄本 俺ら3人は出られるの?



 ■伊藤 だから私に決定権ないんですって(笑)。出てほしいですよ。



 (5) おいしいものを全部のせ



 ▼記者 完成した映画をご覧になって、どんな作品になったと思いますか。



 ★中村 劇中で「夢二ライス」と呼ばれる、いろんなおいしいものを全部乗せにした丼が出てくるのですが、そんな映画だと思います。ヒューマンドラマであり、SF?でもあり、変なノリを大真面目にやってるかと思えば、何かちょっと感動もある。一言で宣伝するのが難しいなと思います。



 ▼記者 非常に盛りだくさんの映画ということで、皆さんから一つずつ「ここを見てほしい!」というポイントを挙げていただけますか。



 ◆柄本 僕は…日村さんですね。



 ●日村 アハハ! 俺なの?



 ◆柄本 日村さんがとにかくすてきなお兄ちゃんで、格好良くて、めちゃくちゃ泣かされます。バラエティーでの楽しい日村さんとはまた違った、新しい一面じゃないかと思います。



 ●日村 そう言ってもらえるとうれしいな。「家族」をとことん描いた物語で、家族のために頑張る男を全力でやらせてもらいました。僕が好きなのは、倫也君が土星人のパワーを発揮するシーン。あそこの倫也君の表情が個人的にツボなので、ぜひ注目して見てほしいです。



 ▼記者 伊藤さんはいかがでしょうか。



 ■伊藤 コメディーの奥にある人間ドラマの部分をかみしめていただければ。「人間」といいつつ、そこに宇宙人が紛れてるのが妙な感じですけど、だからこそ見えてくることがあるというか。


 人間ではない、人間をよく知らない生物が紛れ込んでることで、家族の絆って何なのか、人が人を思い合うってどういうことなのか、よりはっきりと見えてくる、再確認できるような気がします。



 ▼記者 血のつながりだけが家族じゃない、というと陳腐ですけど、その気になれば宇宙人とだって家族になれるんだぜ、というポジティブなメッセージを感じました。



 ■伊藤 なれると思います。この映画見たら。



 ▼記者 ありがとうございます。最後に中村さん、お願いします。



 ★中村 気楽に楽しんでいただける映画なんじゃないかと思います。5月って昔から気がめいったりする時期と言われていますから、暇つぶし程度に気楽な気持ちで劇場に来ていただけたら、アホなノリ全開のやつらがいますんでね。


 で、何だか知らないうちに「じんわりきたぞ、今」みたいなことが起こったら愉快だな、と思って僕たちは作ったので、そんな感じで皆さんの元に届いてくれたらうれしいです。


(取材・文=共同通信 高田麻美、撮影=平栗玲香)

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