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2023.05.16 08:00

【G7財務相会議】金融安定へ対策強化を

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 米欧発の信用不安が広がった金融の安定へ向け、国際協調を加速させる必要がある。結束を強固なものにするとともに、世界経済の難局を乗り越える方策を探りたい。
 先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は、金融安定へ連携して「適切な行動を取る用意がある」とする共同声明を採択した。金融不安が成長を妨げることがないように対策の強化は不可欠だ。
 米銀行の破綻などでは、交流サイト(SNS)で情報が瞬時に拡散し、インターネットバンキングで預金が急速に引き出される実態が浮き彫りになった。現行の金融監視規制が追いつかないデジタル社会の現状にいかに対処するのか、新たな課題を突きつけられた格好だ。
 信用収縮は景気の押し下げ要因となる。共同声明が「金融システムは強靱(きょうじん)だと再確認した」と記したのは、実態を反映しない信用不安の拡大を抑え込みたいためだろう。同時に、課題と向き合い、規制のあり方など対策を探る必要性に迫られている状況が明確になったと受け止めることができる。リスクへの対処を曖昧にできないのは当然で、対策を急がなければならない。
 金融を不安定化させかねない要因として、米国の債務上限引き上げにも関心が向けられる。この問題を巡り、バイデン政権と野党共和党との協議が難航している。政局がらみの難題だが、米国債がデフォルト(債務不履行)となれば金融市場の混乱は必至だ。世界経済の減速要因となるだけに、懸念を取り除く責任ある対応が求められる。
 会議には、存在感を増しているグローバルサウスと呼ばれる新興・途上国の財務相らを招いた。借金漬けにして支配する債務問題や、食料やエネルギーの供給不安などの課題に直面している。G7の影響力が低下する中、ロシアや中国に対抗する態勢づくりに取り組む。
 中国に生産が集中する太陽光パネルなどのサプライチェーン(供給網)を強化するため、新たな枠組みを設立することで合意した。再生可能エネルギーの関連製品は世界的に需要拡大が見込まれる。低・中所得国がより大きな役割を果たせるように支援を続けることは、供給の多様化につながるとともに、経済安全保障の観点からも意義がある。
 また会議では、ロシアが侵攻するウクライナへの支援で結束することを確認した。侵攻遂行の能力を削るため、対ロ経済制裁の抜け穴をふさぐ方策の強化が欠かせない。
 声明は制裁を回避し、損なうようなあらゆる試みに対抗するとして、G7以外の国に制裁に加わるよう呼びかけた。実効性が高まるよう国際圧力を強めることが求められる。
 こうした中ロへの対抗を打ち出しても、中ロから支援を受ける国や、G7と中ロとの対立激化を意識して独自の立ち位置で臨む国がある。G7内でも対中姿勢に温度差が見られる。世界経済が分断されては危うい。その回避は重要な論点であり、議論を深める必要がある。

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