2023.05.13 08:00
小社会 できるかな
訃報に触れ、20年以上前に東京でお会いしたのを思い出す。あいさつを交わした程度だが、おしゃべりをするノッポさんの姿が新鮮で、話し方にも穏やかさがにじみ出ていた。
1990年に番組が終了した後は俳優や作家として活躍。大好きな子どもたちをいつも「子ども」ではなく、「小さい人」と表現していた。その理由を著書「ノッポさんの『小さい人』となかよくできるかな?」に記している。
「〝経験も浅い、物事をよくわかっていない存在〟とは、これっぽっちも思っていないからです」「(子どもは)大人が思うよりも、いやおそらく大人よりも、ずっとずっと賢いんです」。文章に優しさが表れている。
そんな人柄なので、生前は随分心を痛めていたのではないだろうか。遅々として進まない日本の少子化対策や、「大きい人」たちが信じがたい理由で戦争を引き起こし、小さい人の命や生活を犠牲にしている海外の現状に。
ノッポさんは、小さい人たちは「実にいろいろなことがわかっているのです」と強調している。大きい人たちが取るべき行動を知っていて、観察もしていると言いたかったのだろう。できるかな、と。