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2023.05.11 08:00

【プーチン氏演説】侵攻は正当化できない

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 ウクライナ侵攻の長期化をにらんで批判の矛先を欧米諸国に向け、ロシア国民に支持を訴えても説得力は乏しい。国家主権を踏みにじり、国際秩序を揺るがせ続けることは容認できない。早期の停戦と撤退を繰り返し求める。
 ソ連が第2次大戦でナチス・ドイツに勝利したことを祝う「対ドイツ戦勝記念日」の軍事パレードが行われ、プーチン大統領は演説でウクライナへの侵攻の継続を表明した。軍事支援を続ける欧米を「ロシア崩壊が目的だ」と非難した。
 ロシアによる侵攻はウクライナの徹底抗戦を受け、短期掌握のもくろみは崩れた。激戦が続く中、ウクライナが近く大規模な反転攻勢に出るとみられている。
 大統領官邸があるクレムリンの屋根付近で爆発が起きる映像が先ごろ流れた。大統領府はウクライナの無人機が攻撃したと発表した。ウクライナ側は無関係と主張しているが、攻撃を口実にロシアが大がかりな反撃を仕掛けるとの観測が出ている。
 演説ではこの無人機攻撃には触れなかった。侵攻継続へ強気の姿勢を示しながら、権力中枢への攻撃を許したことを取り上げにくいのかもしれない。ただ、強硬派からの突き上げは必至だろう。ウクライナ都市部への集中攻撃や大統領府へのミサイル攻撃も取り沙汰される。
 軍事パレードは厳戒態勢が敷かれる中、兵士の人数や兵器など規模を縮小して行われた。開催都市の中止も目立った。多くの戦力を投入しながら、損害が大きいことが影響していると分析される。
 作戦継続に必要な弾薬供給を巡っては、ロシア民間軍事会社が軍をけん制する動きを見せている。また軍は国民の反発が強い追加動員を避けるため、移民労働者を採用するとの報道もある。
 演説でプーチン氏は当時の日本の「軍国主義」に言及し、中国の抵抗を称賛した。対ロ制裁に同調する日本への反発とともに、中国に配慮を示すことで連携を強めたい思惑がうかがえる。パレードには旧ソ連諸国の首脳らを招いた。欧米をにらみ結束を演出したかったのだろう。
 西側諸国の目標はロシアの崩壊とともに、世界の安全保障と国際システムを破壊することだとプーチン氏は主張した。これがウクライナの人々が経験している惨事の原因だとも強調している。都合のいい解釈が賛同を得られることはない。 
 プーチン氏は「ロシアに対する本物の戦争が再び行われている」と述べた。これまで「特別軍事作戦」と呼んできた侵攻を、第2次大戦と重ねながら「戦争」と位置付けたのは警戒が必要だ。脅威をあおるのは常とう手段ではあるが、攻撃の激化は容認できない。
 死傷者をこれ以上増やさず、生活や産業の基盤が破壊されるのを止めなければならない。ロシアはこれまでにも核兵器の使用をほのめかしてきた。核関連施設への攻撃で原子力災害が危惧される。国際的な圧力をさらに強める必要がある。

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