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2023.05.10 08:00

【教員の労働環境】改善へ踏み込んだ対応を

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 学校現場の労働環境は改善が進んでいるものの、なお厳しい状況にあるようだ。子どもにしわ寄せが及ばないよう、より踏み込んだ働き方改革の取り組みが求められる。
 文部科学省が6年ぶりに行った2022年度の教員勤務実態調査で、長時間労働が一定、是正されたとする結果が出た。公立小中学校教諭の1日平均の勤務時間は、前回調査より約30分減った。残業時間も、過労死ライン(月80時間)を超えた割合は小学校14%、中学校は36%となり、ともに約20ポイント下がった。
 35人以下学級の拡大や部活動へのガイドライン導入、保護者連絡のデジタル化など、負担軽減策が奏功したことがうかがえる。新型コロナウイルス禍で行事が簡素化されたことも反映されたとみられる。
 だが、抜本改善と言うには程遠い水準でもある。残業は減ったとはいえ、中学教諭のまだ3分の1以上が過労死ライン超えだ。文科省が19年に設定した残業時間上限の月45時間を基準に見れば、中学校で77%、小学校で64%が超えていた。
 小学校英語の必修化やデジタル端末の活用など新しい業務が増えていることが背景にある。不登校や発達障害など、子どもを巡る対応が複雑化していることもあるだろう。
 自宅で仕事をする時間も前回調査より増えた。学校での残業は上司にとがめられるためだという。教員の多忙感は、数字以上のものだとみた方がよい。
 教員の多忙化は子どもたちと向き合う時間を削るだけでなく、さまざまな弊害を招く恐れがある。
 厳しい労働環境が敬遠されるためか、21年度の公立小教員採用試験の倍率は全国平均で2・5倍となり、4年連続で過去最低だった。地域によってはなり手不足が生じ、欠員が出た場合の補充で苦労する事例も報告される。精神疾患を理由にした休職も21年度は最多だった。
 教員の負担軽減へ、引き続き業務の見直しが求められる。政府は現場の訴えに耳を傾け、正面から取り組む必要がある。
 対策の柱として文科省は、教職員給与特別措置法の改正を挙げる。
 残業代の代わりに給与月額の4%相当の教職調整額を支給するとした同法は、「定額働かせ放題」の制度とも言われ、長時間労働の温床だとされる。これを見直し、業務効率をアップさせる給与制度を検討するという。ただ、長時間労働の主因はやはり業務量だろう。抜本解消には業務量の議論が欠かせない。
 もう一つの対策の柱に、部活動の改革がある。政府は中学部活の運営の「地域移行」を打ち出したが、指導者や活動場所の確保など実現へのハードルは高い。地域や保護者の協力的な姿勢が前提となろう。
 学校業務を巡っては、長時間労働や多忙さなど負の側面が強調されがちだが、子どもと伴走し、成長を見守る仕事にやりがいを感じ、誇りを持つ教員も少なくないはずだ。教員の熱意をそがないよう留意することも大切だ。

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