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2023.05.08 08:00

【増える行政計画】地方の実態を踏まえよ

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 国が地方自治体に作成を求める行政計画が増え続け、負担が大きいとして改善を求める地方の声が高まっている。
 行政計画そのものに意義がないわけではないが、作る労力に成果が見合わなかったり、他の業務に影響が出たりするケースがあるのは事実だろう。計画は得てして作ることが目的化し、絵に描いた餅にもなりがちだ。政府は見直す姿勢を打ち出した。速やかに対応していくべきだ。
 行政計画は、まちづくりや福祉、環境など、さまざまな分野で各省庁から作成を求められ、「医療費適正化計画」「地域防災計画」などがある。政策の全国展開が目的で、目標や事業内容、スケジュールなどを盛り込み、審議会で検討したり、住民説明会などを開くこともある。
 近年は政策の細分化で種類が増え、作成義務などを課す法律条項数は2021年末時点で10年前の1・5倍に当たる514に増えた。補助金の前提になる場合が多く、自治体は作成や更新に人員と予算を割かざるを得なくなっている。
 行政計画を作れば確かに、実務を進めていく上での目安になり、策定作業を通じて状況の把握や課題の整理にもつながるだろう。
 だが、負担感の大きさを訴える自治体側の声は絶えず、共同通信の直近の調査では、都道府県の7割超が「負担が重い」と回答した。類似計画が多かったり小規模自治体ほど重荷になっていたりする状況があり、全国知事会は昨年、計画作成を義務付ける新たな法令や通知を作らないよう異例の声明を出していた。
 計画増加の弊害は、実務面にとどまらない。国が自治体の行政運営に過剰にかかわることは、自治体の自主性を尊重する地方分権に逆行するからだ。国と自治体の関係を「対等・協力」に改めた地方分権一括法(2000年施行)の理念が後退しているとすれば、そのことも戒めねばなるまい。
 見直し作業そのものは、地方分権を所管する内閣府の主導で既に本格化はしている。
 新規計画の義務付けを最小限にする方針が昨年6月の政府の「骨太方針」に盛り込まれた。今年3月には対応指針が決まり、省庁が作成を求める際は自治体に必要性や費用対効果を説明し、できるだけ義務化を避けることなどが盛り込まれた。
 ただ、省庁側の計画作成へのこだわりは根強いものがあるようだ。
 内閣府が昨年、自治体側の要望に基づき行政計画の扱いを省庁と協議したところ、見直し要望50件のうち廃止は1件で、他は計画の手続き簡素化や統合にとどまった。省庁側が「効率的に施策を進めるためには必要だ」などと譲らなかったケースが多かったという。
 今後の見直しの取り組みも停滞する可能性はある。だが、自治体の業務がパンクしてしまっては、本末転倒だろう。必要な取り組みが効率的に展開されるということを基本に、実態に応じて対応を見直していく必要がある。

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