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2023.05.06 08:00

小社会 犠牲者は真実

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 「戦争の最初の犠牲者は真実」といわれる。一つの例として思い出すのは、30年余り前の湾岸戦争だろうか。あの全身ねっとりと油にまみれた水鳥が、途方に暮れたように宙を見つめる映像だ。

 前坂俊之さん著「メディアコントロール」は詳細をこう書いている。この映像が流れると、当時のブッシュ米大統領は「イラクが流出させた」と激しく非難。イラクは地球環境の敵という戦争支持の国際世論を決定づけた。

 ところが戦争の終結後、テレビ朝日の取材班が事実を追跡。原油の流出源を丹念に追うと、米国防総省は自軍の空爆によるものと認めた―。戦争には常に都合のよい情報操作がついて回る。むろん、日本の新聞にもかつて大本営発表を垂れ流した苦い教訓がある。

 これも戦争とはこういうものかと思わせる事態に見える。ロシアのプーチン政権が、クレムリンがウクライナの無人機に攻撃されたと発表した。「最も広範なものになる」と報復を示唆。ウクライナは関与を否定している。

 誰がうそをついているのかはまだ定かではない。ただ、米欧ではこの戦争でうんざりするほど聞いてきたプーチン政権の「偽旗作戦」「自作自演」という見方が強いようだ。その場合は、さらなる大規模攻撃や追加動員の口実にする思惑がいわれる。

 情報操作が飛び交う戦争が長引く。いずれにせよ、真実と一緒に犠牲になるのは常に動員される兵士と罪なき市民である。

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