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高知新聞PLUSの活用法

2023.05.06 08:00

【AIのルール】国際論議さらに深めたい

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 急速に広がる人工知能(AI)の利用について、先進7カ国(G7)デジタル・技術相会合が、適正な利用に向け、国際基準の策定を目指すことで合意した。
 対話型AIの「チャットGPT」に代表されるように、文章や画像を高度に作成できる「生成AI」の技術はどんどん進化している。活用もさらに広がると予想される。
 しかし、社会の側の備えは整っているとは言い難い。個人情報の流出などさまざまな弊害が指摘されているが、適正利用のルール作りは十分に進んでいないのが実態だ。
 G7がようやく動き始めた。群馬県で開かれた今回の会合では、規制に対するメンバー国の姿勢の違いも浮き彫りになった。G7はさらに議論を深め、国際的なルール策定を実現したい。
 生成AIはインターネット上で高度に情報を集め、与えられた情報を学習し、短時間で文章や画像にできる。特に米新興企業が昨年11月に公開したチャットGPTは、その性能の高さから、日本を含め世界各国で利用者が急増している。
 ただ、不正確な情報が散見され、情報の出どころが不明な点や、人権侵害に当たる記述も含まれるなど課題が多い。教育現場での悪影響も懸念されている。
 偽のニュースや映像も簡単に作れ、サイバー犯罪に悪用できるコンピューターウイルスを作成することも可能とされている。安全保障にも関わりかねない問題だ。
 欧州連合(EU)はこうしたリスクを警戒し、法的規制を強める方向に動いている。G7メンバー国のイタリアは、チャットGPTを一時的に使用禁止にした。
 一方で、AIの開発や利用に後れを取りたくない日本は柔軟な姿勢に立つ。最小限の規制にとどめたい方針だ。
 そうした違いからだろう。今回の会合では、国際基準を策定する必要性では一致したものの、具体論にまでは踏み込めなかった。
 採択された共同声明は「信頼できるAI」の推進を掲げ、新興技術に対する「イノベーションの機会の活用」「法の支配」「適正手続き」「民主主義」「人権尊重」の5原則を盛り込んだ。総論的な内容にとどまった印象は拭えない。
 それでも先進国が結束を確認した意義はある。共同声明で「G7で議論を続ける」とし、今月、広島県で開かれる首脳会議にも引き継がれる予定だ。
 今後、AIはますます身近な存在になるだろう。産業振興にもつながることが期待される。だからこそ、リスクを少しでも回避しなければならない。規制と利用の両立が求められる。
 AIの開発や利用を巡っては、中国やロシアなどの動向も気掛かりだ。先進国と途上国への技術格差にも目を向けなければならない。G7はAI社会が明るいものになるよう、広い視点で論議を重ねる必要がある。

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