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2023.05.05 08:00

【「こどもの日」に】社会で育む共通認識を

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 この社会は未来を担う子どもや、子育て世代を大切にしてきたと言えるだろうか。昨年生まれた赤ちゃんはついに80万人を割り込み、少子化が国政課題としてあらためて注目されるようになった。
 きょうは、「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかる」(祝日法)一日。子どもの出生を祝い、健やかな成長を祈る「端午の節句」でもある。子どもを通して、未来を見据えたい。
 予測されている50年後の日本の姿は、極めて厳しい。厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所が先月公表した推計によると、2070年の総人口は8700万人。15~64歳の生産年齢人口は4500万人余りへと大幅に落ち込み、高齢化率は4割に迫る。年間の出生数は50万人まで減る見通しだ。
 いまの社会がいかに、子どもを産み、育てにくいか。予測された数字は、子育て世代の認識を表していよう。背景にあるのは、二つの「将来不安」とみてよい。
 非正規労働が拡大した社会で親世代の経済環境は厳しく、教育費の負担は重くのしかかる。将来の年金給付にも根強い不安がある。一方、子どもが大人になる時代には、支え手の減少で社会保障制度の負担もさらに増しているだろう。
 そうした状況を考えれば、現実的に出産をためらったり、「もう一人」に踏み切れなかったりする傾向が広がるのもやむを得ない。
 政府も対応は取ってきた。1994年のエンゼルプラン策定に始まり、保育所整備や幼児教育・保育の無償化などを打ち出してきたが、目立った効果はみられなかった。対策が中途半端だったり、短期的な経済効率を優先したりして、抜本的な対策を先送りにしてきたつけだろう。危機的状況に至って、ようやく政界でも対策の機運が高まった。
 政府は3月、岸田文雄首相が唱える「次元の異なる少子化対策」のたたき台となる試案を公表した。児童手当の拡充や育児休業給付の引き上げなどを列挙し、今後3年間を集中取り組み期間と位置付けた。だが、裏付けとなる財源はまだ示されていない。児童手当の拡充だけでも兆円単位の予算が必要になろう。
 6月にまとまる経済財政運営の指針「骨太方針」までに大枠を決める予定だが、どう財源を確保するのか。子育て世代の新たな負担増が生じれば、かえって将来不安を膨らませ、少子化に拍車をかけかねない。負担と効果のバランス、施策の優先順位が重要になってくる。
 4月には、子ども政策の司令塔となる「こども家庭庁」も発足した。省庁の縦割り解消を目指し、少子化や虐待、貧困などの課題に総合的に対応するとの触れ込みだ。
 ただ、施策も組織も目的に向けた手段にすぎない。希望する人が子どもを産み、育てやすくなって、はじめて成果と言える。社会全体で子どもを育む覚悟、共通認識を醸成できるか。いよいよ、対策が「待ったなし」の状況を迎えている。

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