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2023.05.04 08:00

【日米韓の連携】地域安定に資する努力を

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 日米韓3カ国が連携を強化する動きをみせている。19日からの先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)に合わせ、岸田文雄首相は韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領を拡大会合に招き、個別会談を開く。日米韓首脳会談も開催が調整されている。
 その前には首相が訪韓し、尹氏と会談する。首脳同士が相互訪問する「シャトル外交」による訪韓は10年以上途絶えていたが、今年3月に合意した再開の第1弾となる。日韓関係は改善の兆しがうかがえるようになった。正常化へ向けた首脳対話の促進を歓迎したい。
 バイデン米大統領と尹氏は先ごろ会談し、共同文書「ワシントン宣言」を発表した。米国が核兵器と通常戦力で韓国防衛に関与する拡大抑止の強化を盛り込んだ。
 拡大抑止を巡り、韓国では核・ミサイル開発を進める北朝鮮に対する実効性を疑問視する意見がある。強化を打ち出したのは、そうした懸念を払拭する狙いがあるようだ。また、韓国で広がる核武装論を抑え込もうとする意図が指摘される。
 米政権は尹氏を国賓として迎え厚遇した。尹政権は最大の懸案である元徴用工訴訟問題を巡り、日本企業の賠償支払いを韓国政府傘下の財団に肩代わりさせる解決策の実行に着手した。こうした日韓関係の改善に取り組む姿勢を評価した対応と受け止められている。
 一方、日本は韓国を輸出手続き上優遇する「グループA(旧ホワイト国)」対象国に再指定する手続きに入った。半導体関連3品目に関する厳格化措置も緩和しており、対韓輸出の規制強化は全て解除される。改善への動きは進展している。
 日韓の歩み寄りは日米韓の連携強化につながり、米政権にとっても重要性は高い。北朝鮮対応に加え、覇権を争う中国包囲網の構築に欠かせないためだ。米韓首脳会談では、インド太平洋地域の平和と安定を維持するため、日本を含めた3カ国協力に取り組む方針を確認している。 
 ただ、韓国では歴史認識も絡み尹政権の対日外交に批判が向けられる。元徴用工訴訟問題は解決が見通せない状況で、政権支持率は低迷する。日本では韓国の対応が急変することへの警戒感がぬぐえない。安定しているとは言い難い関係だけに、十分な意思疎通が求められる。
 米韓のワシントン宣言は、核兵器を搭載可能な米軍の原子力潜水艦の韓国への派遣や、米韓の核戦略計画に関する協議体の新設を掲げた。バイデン氏は核の再配備そのものは否定しているとはいえ、拡大抑止の在り方は重要な論点だ。米韓の核戦略協議体の創設は、日米韓首脳会談でも話題になるとみられる。日本の向き合い方が問われることになる。
 被爆地・広島で開催するサミットは、「核兵器のない世界」実現へ機運を高める狙いがある。一方で北朝鮮や中国の動向から、米国が提供する「核の傘」に頼る姿勢も目立つ。安全保障環境が厳しくなる中、地域の安定へ防衛力の充実と同時に外交の必要性も高まっている。

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