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2023.05.02 08:00

【取引情報流出】組織統治が緩んでないか

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 広く実害を与えかねない重大な事態といってよい。県内事業者の経営に関わる機微な情報を取り扱っているにもかかわらず、緊張感を欠いていたのではないか。組織のガバナンス(統治)の緩みを重く受け止めなければならない。
 県内事業者の販路開拓などを担う県地産外商公社が、事業者にとっては機密情報である商品ごとの卸売価格などを外部に流出させていたことが明らかになった。県地産地消・外商課が指示していた。事業者の信頼を損ねる失態と言わざるを得ない。猛省するべきだ。
 関西エリアで県産品の販路拡大を目指す「関西戦略」は、浜田省司知事の看板政策。新型コロナウイルスの流行で展開が遅れていたが、本年度からは実働部隊となる公社の大阪での態勢を増強した。来年には拠点となるアンテナショップが開店する予定で、取り組みの加速を図る。
 近鉄グループは関西でのビジネスのノウハウとともに、人材も派遣する、いわば関西戦略のパートナー的存在。ことし6~12月には、県が委託して、あべのハルカス近鉄本店内の店舗で県産品の販売を計画する。この関西戦略の「前哨戦」を巡って不祥事が発生した。
 県などの説明によると、近鉄百貨店は県に対し、公社が運営する東京のアンテナショップ「まるごと高知」で扱う商品リストや売れ筋などとともに、卸売価格の情報も求めたという。関係が深いとはいえ、一線を越えた要求だろう。
 これに対し、県の担当者は販売実績のデータを提供するよう公社に指示。506事業者1万点以上の全商品に関する卸売価格のほか、売価や収益率、粗利率などの情報を送っていた。県内事業者が商談で、近鉄側に取引情報を提示されたことで流出が判明した。
 取引の仕方や方針は事業者ごとに異なるだろうが、通常は販売業者ごとに交渉して卸売価格を決める。流出した情報は事前に手の内が筒抜けになっていたに等しく、相手側が利用すれば交渉にもなるまい。県の指示はビジネスの慣行上、理解し難い判断と言わざるを得ない。
 公社は疑問に感じつつも、県の指示だからと上司に相談もせず提供したようだ。昨年は県内事業者の画像をホームページに無断掲載した事案もあった。法令順守や組織統治が十分に機能しているとは言い難い状況が続いている。
 単独では販路拡大などが難しい小規模の事業者が多い本県にとって、まるごと高知による情報発信をはじめ、公社が果たしてきた役割は大きい。関西戦略の本格化には、コロナ禍で苦境にあった事業者の期待も膨らんでいただろう。
 情報の流出範囲は近鉄グループにとどまったとみられる。だが、チェック機能も働かず、重大な情報がいとも簡単に流出してしまう状況を目にした事業者が、大事な商品を安心して託せるだろうか。県や公社は事の重大性を十分に認識し、再発防止策を徹底する必要がある。

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