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2023.05.01 08:00

【G7環境相会合】脱炭素へ理念が見えない

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 時間の制約が強まっている。専門家は今後10年間の対策が人類や地球に数千年にわたり影響を与えると警告している。このままの姿勢では、気候変動対策や環境保全の分野でリーダーシップどころか、信頼さえも失いかねない。
 先進7カ国(G7)気候・エネルギー・環境相会合で、議長国である日本の消極的な姿勢が浮き彫りになった。2050年の温室効果ガス「実質ゼロ」に向け、「排出削減策が取られていない化石燃料使用の段階的廃止を加速させる」との共同声明は採択したものの、昨年の合意をなぞる内容にとどまった。
 国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)はことし3月に公表した報告書で、産業革命前からの気温上昇を1・5度に抑える目標の達成には、この先10年程度が「決定的に重要」と指摘。30年に世界の二酸化炭素排出量を現状からほぼ半減させる必要があるとした。各国が示した削減目標では不十分で、対策の強化を強く迫る内容だった。
 その公表後に開かれたG7担当相会合である。地球温暖化に大きな責任がある先進国がどういったメッセージを発するか。世界が注目していたはずだ。
 共同声明では、段階的な廃止の対象に需要が根強い天然ガスを盛り込んだ一方、焦点だった石炭火力発電を含め、年限を切った形での全廃で合意できなかった。
 それも、議長国の日本が議論の足を引っ張った格好だ。参加国は事務レベルの交渉から、35年までに電力部門の完全な脱炭素化や目標年次の前倒しを求めてきた。だが、二酸化炭素の排出量が多い石炭火力発電に依存する日本は、今後も温存する方針から反対した。
 国内の事情を優先した内向きな姿勢で世界はもちろん、ほかの先進国の失望をも招いたに違いない。少なくとも地球温暖化対策への本気度は疑われよう。
 エネルギー問題に対する真剣さでドイツとの違いが際立った形だ。ドイツは先月、脱原発を完了。チェルノブイリ原発事故を受け、02年から脱原発に取り組んできた。実現を可能にしたのが、再生可能エネルギーの普及だ。昨年は総発電量のうち、風力や太陽光などで46・3%をまかない、30年までに8割へ引き上げる目標を掲げる。
 一方、日本では東京電力福島第1原発事故から12年余りたっても再生エネ普及に必要な送配電網増強の動きは遅く、再生エネの伸びも鈍い。石炭などの火力発電に頼り続け、燃料価格の高騰にあえぐ。
 さらに過酷事故の当事国でありながら、政府は「脱炭素化」を名目に原発の最大限活用にかじを切ろうとしている。これまでのエネルギー政策にドイツのような理念を見いだすことはできない。
 今月の首脳会議(広島サミット)でもエネルギーや気候変動対策は主要テーマになる。石炭火力発電に固執する内向きな姿勢のままでは、さらなる失望を招きかねない。

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